地震防災総合研究特別研究委員会(V期)

総合課題:地震防災に関する総合的研究

                地震防災総合研究特別研究委員会
                             委員長 直 井 英 雄

 1995年1月に発生した阪神・淡路大震災で、「建築におよび都市に関する広範囲の分野の研究者、技術者等により構成されている本会において、学際的・横断的見地よりこれらの問題に取り組むべきである」との認識の基に同年1月に「兵庫県南部地震特別研究委員会(委員長 岡田恒男)」が設置された。同委員会では総合的な防災性向上にむけて緊急に取り組むべき特定研究7課題を選定し、1995年7月「建築および都市の防災性向上へむけての課題」(第一次提言)、1997年1月「被災地の復興および都市の防災性向上に関する提言」(第二次提言)、1998年3月「建築および都市の防災性向上に関する提言」(第三次提言)を公表した。(各提言全文はニュース掲示板掲載)その提言に今後さらに取り組むべき4つの研究課題が残り、1998年4月に「地震防災総合研究特別研究委員会(第U期)(委員長 西川孝夫)」が設置された。同委員会では主に地震情報をどのように防災対策に取り入れるかといったテーマで4つの課題に取り組み、その成果を多くの機会に発表してきた(「地震防災総合研究特別研究委員会(第U期)」活動報告参照)。しかし地震防災研究の重要性に鑑み、2001年4月より新たに第V期特別研究委員会を継続することとなった。本委員会は第U期の研究成果を受けて、次の3つの横断的課題を設定し3年間研究に取り組むこととした。

研究項目

  1. 危険度・耐震安全性評価の総合的な研究(危険度・耐震安全性評価小委員会)

  2. 都市防災・復興方策の総合的な研究(都市防災・復興方策検討小委員会)

  3. 都市の防災改善推進方策の総合的な研究(防災改善推進方策小委員会

活動内容

  1. 危険度・耐震安全性評価の総合的な研究

    地震災害の軽減に関する研究は、いままで構造、計画などの各分野に分かれて縦割り的に行われてきた傾向があることは否めない。しかしながら、地震災害は、地震発生から地震動の発生、建物の応答、建物被害、建物内容物被害、人的被害など多岐にわたる問題を含んでいる。この研究では、建物の耐震安全性の向上のための方策のひとつとして、大地震発生や強震動の評価結果を積極的に取り入れて建物の適切な安全レベルを選定するための方法や手順を提案することとしたい。

  2. 都市防災・復興方策の総合的な研究

    阪神・淡路大震災から6年余が経過した。いまだその傷跡は癒えていないが、この間、国内外において新たな中・大規模地震が頻発している。しかし、一時的に高まった災害に備える意識も薄れがちであり、財政悪化や活力低下などの社会経済の変化によって、被害軽減のための木造密集市街地整備等の継続的な取り組みが困難になっている。こうした状況を打開し、持続的かつ発展的な都市防災・復興研究をすすめるために関係委員会、関係学会などと連携をとりながらより実践的な検討を進めたい。主要な課題は以下の3点である。
    @ 防災をテーマとする平時の都市計画と、復興をテーマとする復興都市計画それぞれのシステムとしての充実と関係性の模索
    A 大規模災害時の計画・制度・プログラムが有効に機能するための課題の整理と事前準備
    B災害に備える地域住民組織・まちづくり専門家・情報技術のあり方
    3つの主要テーマを中心に逐次具体的な検討テーマを設定し、公開研究会を基本としながら継続的に検討を進める。

  3. 都市の防災改善推進方策の総合的な研究

    個々の住宅の防災改善を実現するための有効な手段を、主として以下の3点について提案しようとするものである。
    @ 住まい手のイニシャティブによる防災改善の実施を社会が強く求めていることを税制や補助金で見えるようにして促進させるシステムの導入
    A 明らかに問題をはらんでいる木造住宅の(耐震診断と)補強の促進
    B 客観的に自らの住まいと地域の危険度がどの程度であるかが見えるようにしてインセンティブとする仕組みをつくる
    他人事ではなく自分のことであると認識させるこの3つの切り口から問題の解決を目指すものである。防災対策は投入した努力に見合って報われるという立場から提案をしたい。

以上、各小委員会の具体的な活動は、随時本ホームページに掲載することとします。また会員諸氏から随時ご意見をお寄せいただければ幸いである。

2001.5.16