地震防災総合研究特別研究委員会

第1回 危険度・耐震安全性評価小委員会 議事録


A.日  時:2001年6月18日(月) 14時00分〜17時00分
B.場  所:建築学会305会議室
C.出席者: 主査:翠川三郎
        委員: 井上 豊、石井 透、上谷宏二、小谷俊介、釜江克宏、島崎邦彦、
            中川勝登、西川孝夫、諸井孝文、池田浩敬、大崎靖彦、岡本 肇、
            濱田信義、山根尚志、吉田克之、片岡俊一
                                             (記録担当:片岡俊一)
D.提出資料
 資料N→.01-01 地震防災総合研究特別研究委員会設置主旨
 資料N→.01-02 地震防災総合研究特別研究委員会(第V期)(第1回)議事録案
 資料N→.01-03 危険度・耐震安全性評価小委員会での検討課題について
 資料N→.01-04 EARTHQ・AKE SPECTRA
 資料N→.01-05 総合的な耐震安全性の実現に向けて
 資料N→.01-06 2001年度関東大会記念事業
           日本の都市はどこまで安全か−開催要項
     参考資料 地震防災総合研究特別研究委員会ホームページのコピー

  委員会開催に先立ち、翠川主査より挨拶と各委員の自己紹介があった。

E.審議事項

1.幹事の選出
  幹事として、濱田信義委員、池田浩敬委員、片岡俊一委員を選出した。

2。委員会発足に関する説明
 資料N→.01-01、01-02を基に、翠川主査よりこれまでの経緯が概略紹介され、西川委員より
 補足説明があった。
・ 地震防災総合研究特別研究委員会は、兵庫県南部地震の後の1995年1月に組織され、
 1998年4月には第U期の委員会が組織された。
・ 2001年4月より新たに第V期特別研究委員会(委員長:直井英雄)を継続することとなった。
・ 3つの研究項目を挙げ、各々を3つの小委員会で研究することになった。
・ 上記の小委員会は、前期の小委員会の活動を引き継ぐものでもあり、当小委員会は、地震
 情報対応策小委員会(主査:久保哲夫)、総合耐震安全性小委員会(主査:濱田信義)の活動
 を主として引き継いでいる。

3.委員会活動に関する自由討議
 資料N→.01-03、01-04を翠川主査が、資料N→.01-05を濱田幹事、吉田委員が紹介したのちに、
 本委員会の活動内容に関して自由討議を行った。主たる意見・討議は以下のとおり。
・ 地震調査推進本部における強震動予測地図にはシナリオ地震による地震動予測と地震ハザード
 マップがあるが、現状では公表の様式が未定であるので、建築学会としても要望等を発信する
 必要がある。
・ 新しい建築だけを対象にするのか、あるいは既存建築までを含むのかは、早い段階で決めた方
 が良い。
→既存建築の安全レベルは「耐震メニュー2001」(資料01-05)を逆にたどれば推定できる可能性は
 ある。
→ 既存建築の耐震安全性を判断するのは容易でない。
→ 既存建築については、「防災改善推進方策小委員会(主査:古瀬 敏)」があるので、そちらに
 任せて良いのではないか。
→ 議論を活発にするためにも、新しい建築に絞った方がよいと思う。
・ 地震動強さと建築被害の様子を結びつける定量的な表現が必要であろう。
→ 被害の定義が必要であろう。
・ 各種地震情報を地域社会や個人へ橋渡しすることが本小委員会の目的のように思える。
・ 地震動予測の信頼性を向上させているが、建築被害の推定精度はどの程度なのか。
→ 被害の説明はまだまだ不十分なのではないか。
→ 被害建物で観測された記録を用いて応答解析を行えば被害状況と対応した結果が得られるので、
 応答解析自体は正しいのであろう。
→ 今後予測された地震動の強さが、1995年兵庫県南部地震の神戸における地震動より強かった
 場合、被害を適切に予測できないのではないか。
→ 構造分野の各分野で独自に被害を説明づけてしまうことも問題である。
・ 「耐震メニュー2001」(資料01-05)について
→ 「耐震メニュー2001」は性能設計を目指したものと解されるが、性能設計を突き詰めて考えて
 いくと、二次部材が耐震性能に寄与するということまで問題にする必要があるかもしれない。
 そうなると、例えば間仕切りの位置変更も耐震性能に影響することになり、設計法や維持管理の
 問題にもなる。どこまでを対象と考えるのか?
→ 現状ではデータや解析例が少ないので、安全レベルについてはキャリブレーションが必要であろう。 また、耐震等級を算定する図では、既存の式を用いているが、これも検討する必要があろう。
→ 耐震5級は、あまりにも耐震性が低いので、このような構造物の取り扱いを考える必要がある。
→ 世間一般が、どの程度の耐震性を欲しているのか(いわゆる相場)を知ることが必要であろう。
→ 設計者と施主の考えをシンクロさせることが「耐震メニュー2001」の一つの目的となっている。
→ 各安全レベルの区分けはどのような根拠で行ったのか。特に、重損以上の被害を受ける確率が
 記載されているが、被害の期待値を考えると全体的に値が大きすぎるのではないか。
 この値の設定根拠は何か?
・ 数字自体にはあまり意味がなく、最初に安全レベルBがあり、そこから分けていった。
 また、要求性能から始まった訳でもない。
・確率に関しても追加検討が必要であろう。
→ 耐震等級と震度階の関係を見ると、各損害が1つの震度に対応しているが、建物に与えられる
 機能を考えるともっと幅が広くてもよいのではないか。また、性能設計を考えた場合には、個別
 事象が考えられるようにした方が良いのでは無いか。
・ 耐震等級と震度階の関係は、中損と重損の区分に力点を置いている。また、どのような建物にも
 標準的に使えるものとして考えている。
・ 木造も検討の範疇に含めるか否かについてもある程度決めておく必要があると思う。
→ 木造に関しては、地域によって強度や工法が様々であるので、取り扱い難い。
・ 一般の人への働きかけを考えると分かりやすい表現が必要である。
→ 一般の人は、既存と新築が連続的に考えることが多いので、既存と新築を分けられないのでは
 ないか。
→ 構造的被害と経済的な被害の関係を示す必要があるのではないか。

4.資料01-03の追加説明
 資料01-03のうち、「長期的な地震発生確率の評価手法について」に関して島崎委員から補足
 説明があった。
・ 発生確率は、活断層全体を1/2、1/4、1/4に分けようとした時の目安である。
・ 例で示している宮城県沖地震では、地震規模は活動間隔に依存しないのか?
→ ここでは地震の規模は活動間隔に依存させていない。
・ 鳥取県西部地震のような地震は、どのように取り扱うのか?
→ いわゆるバックグランドの地震として扱うことになる。
・ 地震以外の原因による災害の発生確率を計算しているが、確率の計算ベースが地震と異なるの
 ではないか?
→ ここで出ている交通事故や火災は多数のデータを解析したものであり、地震は発生間隔をモデル
 化したものなので、この点では違うと言える。

5.資料01-06について
 今年度の建築学会大会の記念事業として9月19日の夜に行うものであり、多数の参加を期待
 している旨の紹介が西川委員よりあった。

6.次回討議内容について
・ 次回:7月30日15:00〜17:00で開催することとした
・ 以下の話題を委員から紹介してもらうこととした
   @ 地震調査推進本部が作成している地震動予測地図について:釜江委員
   A 地震調査推進本部「成果を社会に活かす部会」報告:中川委員
   B 被害と震度の関係について:諸井委員

7.ホームページの紹介
 事務局より、地震防災総合研究特別研究委員会ホームページのコピーが示され、積極的に
 ホームページを利用することが報告された。議事録についても、ホームページに掲載する。
                                                          以上