地震防災総合研究特別委員会

第2回 危険度・耐震安全性評価小委員会 議事録

A.日 時:2001年7月30日(月)15時00分〜17時45分
B.場 所:建築学会304会議室
C.出席者:主 査:翠川三郎
        幹 事:濱田信義 池田浩敬 片岡俊一
        委 員:井上 豊 石井 透 小谷俊介 釜江克宏 工藤一嘉 中川勝登
             西川孝夫 源栄正人 諸井孝文 岡本 肇 富松太基 山根尚志
             吉田克之                                    (敬称略)
                                              (記録担当:池田浩敬)
D.提出資料
 資料No.02-01 糸魚川―静岡構造線断層帯(北部、中部)を起震断層と想定した強震動評価手法
          について(中間報告)
 資料No.02-02 1995年兵庫県南部地震による気象庁震度と住家全壊率の関係
 資料No.01-03 政策委員会成果を社会に活かす部会報告
 番号なし 第1回危険度・耐震安全性評価小委員会議事録(案)

E.審議事項

1.前回議事録の確認

  片岡幹事より説明の後、原案通り承認された。

2.地震調査推進本部が作成している地震動予測地図について
  資料No.02-01に基づき,釜江委員より強震動評価部会の中間報告について説明があった。
・ この中では、「震源の特性化手法」の検討が中心的なテーマとなっている。
・ 強震動予測においては、微視的震源特性(アスペリティの位置、大きさ、数等)が重要であり、これをどう
 モデル化するかということについて検討を行った。
・ モデル化においては、パラメータの設定方法が確立されていないので、一部の設定を変えつつ4つの
  ケースについて検討を行った。
・ 強震動計算手法としては、ハイブリット合成法を用いた。
・ 98の評価活断層のうち危険性が高い20程度の活断層について、動いた場合どのような揺れになるかと
 いう予測を平成16年度までに行うこととなっており、本検討は、その一環として糸魚川―静岡構造線断層
 帯についての検討をおこなったものである。
 この説明に対して以下の意見があった。
・ 現在、仙台市で宮城県沖地震を対象とした地震被害想定の再検討を行っている。この場合には、地震動
 の想定を面的に行う必要があり、想定結果は市民に広く公開し、理解してもらう必要がある。
・ 市民に公開する予測結果はわかりやすいものでなければならない。例えば、今回は、検討過程ということ
 で、4つのケースが示されているが、一般住民には分かり難い。
・ 今後、このような地名の入った地震動予測が次々に出されることになると思うが、一般住民に対して、こう
  した結果をどのように知らせていくのか、また、どのような形で防災対策に反映させていくのか、といった
  検討が必要になり、それは本小委員会の検討テーマの一つではないか。
・ 現在、強震動評価部会で行っている地震動予測の結果は、そのまま地震対策に使うというレベルには至
 っていない。
・ これらの結果を地震対策に活かすためには、もうワンクッションが必要である。

3. 地震調査推進本部「成果を社会に活かす部会」報告について
  資料No.02-03に基づき、中川委員より説明があった。
・ これは、地震調査委員会が行う活断層に起因する地震活動の長期評価の結果を有効に社会に活かして
  いくため、その提示のあり方について、デルファイ方式のアンケート調査の結果も踏まえ、受け手の立場
  に留意して検討を行ったものである。
・ 本資料の中の「経過率」とは、(当該地震が発生してからの経過時間)/(平均活動間隔)のことである。
・ 「集積確率」とは、断層の活動を注意喚起するための指標の一つで、言葉で言えば「その時点までにすで
 に地震が発生していてしかるべき(発生しているはずの)確率」ということになる。

4. 本小委員会の活動内容について
  本小委員会の活動内容に関して自由討議を行った。
 主たる意見・討議は以下のとおり。
・ 評価結果として、地震危険度が低いと評価された地域に対する配慮が必要ではないか。例えば、危険度
  が低いと評価された地域では、耐震化等の対策をとらなくても良い、と結論付けてしまって良いのかとい
  う問題がある。
・ 前回の小委員会でも出ていた既存建築物の問題は、非常に重要な問題ではあるが、本小委員会の中で
  扱っていくことは困難ではないか。
→ 本小委員会においては、新築の建築物を対象として検討を行うが、その範疇の中で
  既存建築物についても目配りをしていくことになるであろう。
・ 一般市民は、建物の構造体が残るか否かではなく、建物が地震後も使えるか否かという点(=機能の維
  持)に関心がある。しかし、建築の分野では、そうした研究が殆ど行われていないのが現状ではないか。
  全壊・半壊といった被害程度を表す指標とも関連してくる。
・ 機能維持の問題は、構造と設備、二次部材といった各分野の境界領域にあり、なかなか研究が進んでい
  ない。
・ 二次部材や設備についても、構造との境界領域も含め、これまでにも、レベルの差こそあれある程度検
  討は行われてきているが、まだ、本来の性能設計と言える段階までは至っていない。
・ 強震動評価部会の中間報告で出されていた地震波形を使って、建物の応答解析をやってみてはどうか。
・ 出てきたものが直接使えるかどうかは検討が必要であり、設計用に使うためには、ある種の変換を行う
 必要があるかもしれない。
→ まず、応答スペクトル、エネルギースペクトルといった外力評価をしてみてはどうか。
・ 地震動予測を地震対策にどう活かして行くかということについては、例えば、想定としては最悪のケース
  を想定し、対策はその8掛けで行うといった政策的な判断が入る余地があるのではないか。
・ 本小委員会での検討の基本方針としては、地震情報を取り入れ「耐震メニュー2001」を発展させることを
  中心に検討し、既存建築物については「耐震メニュー」と直結させるのは難しいが、地震情報と(それに
  対応してとるべき)防災対策との関係から目配りをしていくといったことでいかがか。

5. 公募委員の選考について
 2名の応募者に対して審議の結果、採用を見合わせることとした。

6. 次回討議内容の確認
・ 次回を10月2日16:00〜19:00で開催することとした
・ 以下の話題を委員から紹介してもらうこととした
@ 被害と震度の関係について:諸井委員
A 「耐震メニュー2001」の課題及び耐震メニューの側からみた地震情報の分野への要望等について
  :池田委員

                                                             以上