地震防災総合研究特別研究委員会

第3回 危険度・耐震安全性評価小委員会 議事録

A.日  時: 2001年10月2日(火) 16時00分〜19時00分
B.場  所: 建築学会304会議室
C.出席者: 主査: 翠川三郎
        幹事: 濱田信義,池田浩敬,片岡俊一
        委員: 福和伸夫,竹脇出(上谷宏二代理),富松太基,源栄正人,岡本 肇,石井 透,
            諸井孝文,吉田克之                               (敬称略)
                                               (記録担当:片岡俊一)
D.提出資料
       資料No.03-01 「耐震メニュー2001」の課題及び地震情報の分野との関連性(池田浩敬)
       資料No.03-02 横浜市地震マップ
       資料No.03-03 危険度・耐震安全性評価小委員会活動方針(案)
       番号無し    第2回危険度・耐震安全性評価小委員会議事録案
                8月24日付け日経産業新聞「地震喪失額容易に算出」

E.審議事項

1. 前回議事録の確認
   池田幹事より説明の後,一部語句を修正して承認された。

2. 被害と震度の関係について
 諸井委員より資料No.02-02の紹介があり,質疑応答を行った。
 概要は以下のとおり。
・ 木造家屋の耐震性能の向上度合いを踏まえて,1995年兵庫県南部地震の際の神戸における震度VIIと
 全壊率との関係を調べた。
・ 過去の被害統計における被害の定義は資料により様々であるが,全壊の定義は「修復しえないほど崩壊
 した状態」を指すことは統一的である。
・ 兵庫県南部地震の被害の統計量は建築研究所のものを利用したが,この資料は全壊又は大破とあるので,
 全壊率と全壊・大破率との統計的関係を求め,全壊率を算出した。
・ 横軸を墓石の転倒震度とする木造家屋のバルナラビリティ関数を作成し,住宅の耐震性の向上度合いを
 確認した。
・ その結果,震度VIIが発表された福井地震の際の木造家屋の全壊率30%に対応する墓石の転倒震度を用
 いて換算すると,神戸における震度VIIの地域では木造家屋の全壊率が10%程度であることが分かった。
主たる質疑は以下のとおり。
・ 耐震性能の平均値は向上しているが,ばらつきが大きくなったと考えられないか。→建築年代の違いによっ
 て耐震性能のばらつきが大きくなったと理解できるが,地震動の情報も増えてきたので,バルナラビリティ
 曲線の傾きが小さくなっている傾向はあるかもしれない。
・ 1995年兵庫県南部地震の(地震動の)特殊性が組み込まれているので,この研究で得られたバルナラビリティ
 関数を全ての地震に対する被害推定に用いるのは適切ではないのではないか?
・ 気象庁が震度VIIを定めた時の調査内容はどのようなものか。←資料No.02-02の参考文献(気象庁,1997)
 に記載されている。
・ この研究では墓石の転倒換算震度を横軸にしていたが,地震動破壊指標と関連してバルナラビリティ関数
 を設定する必要があるのではないか。また,周期特性を無視するのも適切ではない。
・ 被害の定義を明示する必要がある。また,使い方によっては被害の定義は異なってもよいと思われる。
・ 例えば,「耐震メニュー2001」の被害の定義と罹災証明用の被害の定義との関係はどのようになっているか
 を確認する必要があろう。

3. 「耐震メニュー2001」の課題及び地震情報の分野との関連性について
  「耐震メニュー2001」は既存資料を取りまとめて作成しているので,見方によっては新しい情報は全て課題
 であるとの説明に引き続き,池田幹事が資料No.03-01を説明した.その後に意見を交換した.主たる意見・
 討議は以下のとおり。
・ 「耐震メニュー2001」で用いている基本加速度マップは最新の情報が含まれていないので,見直しが必要で
 あろう。
・ 地表加速度を指標として使っているが,その値をどのようにして設計荷重に変換  するか,ということまでは
 言及しておらず,課題として残っている。
・ 発生することが切迫している地震については確率論を用いる必要はないのではないか。←確率論とシナリオ
 地震の2本立てで検討するのが良いと思われる。
・ 地震ハザードが低い地域をどうするか。←最低限は建築基準法がカバーするのであろう。
・ 品確法と建築基準法との関係はどのようになっているのか?
・ 「耐震メニュー2001」では重損以上の被害を受ける確率が安全レベルBの場合10%以下であるが,この数字
 の根拠はなにか?アメリカでも再現期間50年で再現確率10%がスタンダードになっているようだが,関係は
 あるのか?
・ 地震動強さの評価には地盤特性が重要である。地盤データを保有している自治体もあるが,自治体独自の
 地盤データだけではなく,確認申請に添付される地盤柱状図を利用できる仕組みがあると望ましい。
上記議論に関連して資料No.03-02の説明があった。
・ 横浜市は15000本のボーリングデータを保有しているが,このデータをコンパイルして50mメッシュの地盤データ
 を作成し,地震動予測を行った結果が資料No.03-02である。
・ メッシュのサイズ50mは,横浜特有の谷地形(谷戸)を表すために必要であった。
・ 4万部作成し,横浜市内の区役所において自由に持っていってもらうとともに,住民向け説明会を開催している。
・ この資料を住民が見ることで耐震改修を促進させるねらいがある。
・ このような資料が出ると地価に反映するのではないか?←アメリカにおける一例ではあるが,不動産売買が
 一時期滞ったことはあったが,地価が下落したことは無かった,という話がある。

4. 活動方針について
 資料03-03をたたき台にして活動方針について意見交換を行った。主たる討議・意見は次のとおり。
・ この活動方針は,3年間を見通したものであるのか?←原則的にはそうである.活動内容を明確にしようと
 するもので,活動項目を除外するものではない。
・ 「設計地震動」という言葉が唐突に出ている感がある。
・ 「建物諸機能の被害に対する設計法の確立」とあるが,確立まではできないのではないか。
・ 被害の定義を明確にするよりも耐震等級に持って行く手続きの確立を優先させるべきではないか。
上記の意見を踏まえて活動方針(案)を修正して各委員に送付し,コメントをもらってさらに修正することとした。

5. 次回以降の小委員会の持ち方について
 翠川主査より,次回は公開研究会+委員会という形式にしたい旨の提案があり承認された。公開研究会の
 テーマとして,
  □「地震ハザードについて」
  □「被害の定義について」 等が挙げられた。
但し,都市防災・復興方策検討小委員会でも被害の定義についての公開研究会を開催する予定があるので,
親委員会において調整することとなった。

6. 次回討議内容の確認
・ 次回を12月4日14:00〜17:00で開催することとした。
・ 公開研究会のテーマは地震ハザードとし,話題提供者と講演内容を以下のように依頼することとした。
  @ 石井委員:政府地震調査研究推進本部における「強震動予測地図」の紹介
  A 福和委員:愛知県における設計地震動設定プロジェクトの紹介
                                                               以上