地震防災総合研究特別研究委員会
危険度・耐震安全性評価小委員会(第10回)議事録
A.日 時 2002年12月6日(金) 14時00分〜17時30分
B.場 所 建築学会306会議室
C.出席者 主査:翠川三郎
幹事:濱田信義、片岡俊一、池田浩敬
委員:
井上 豊、諸井孝文、山根尚志、石井 透、吉田克之、富松太基 (敬称略)
(記録担当:池田浩敬)
D.提出資料
資料No.10-01
地震防災総合研究特別調査委員会(第V期)(第6回)議事録(案)
資料No.10-02 平成14年度科学研究補助金研究成果公開促進費「研究成果公開発表(B)」実績報告
書(平成14年11月25日開催の公開シンポジウム)
資料No.10-03
公開シンポジウムにおけるパネルディスカッションの要旨(片岡幹事)
資料No.10-04 耐震メニュー2001に関する問題点の整理(山根委員)
資料No.10-05
耐震メニューのイメージ(翠川主査)
資料No.10-06
耐震メニューの構成概念(諸井委員)
資料 第9回危険度・耐震安全性評価小委員会議事録(案)
E.審議事項
1. 前回議事録の確認
池田幹事より説明し、一部語句の修正を除き承認された。
2.
地震防災総合研究特別調査委員会前回議事録(案)について
資料No.10-01に基づき、翠川主査より説明があった。
・本小委員会からは、耐震メニュー2001の見直しを行っていること、公開シンポジウムを11月25日に行う
こと等を報告した。
・来年3月19日の地震防災総合研究特別調査員会報告会では、各小委員会から2名(主査+1名)程度報
告し、その後質疑・討論を行う予定。
・来年度の東海大会において、研究協議会を行うこととなった。(2日目午前中の予定)
・平成15年度科学研究費補助金「研究成果公開発表(B)」交付申請について、本小委員会を含む2小委
員会が申請する事が承認された。(本小委員会のシンポジウムのテーマは「耐震メニュー」)
・委員会の最終年度の取りまとめ方法について議論が行われた。@各小委員会の活動記録をまとめる、
A研究協議会、シンポジウム等の成果を踏まえ分かり易い内容にして印刷物にまとめる、といった提案
がなされた。
3. 11月25日に開催した公開シンポジウムの報告
・ 参加者は60名であった。
・ 資料No.10-02に基づき、片岡幹事よりパネルディスカッションの要旨が報告された。
4. 「耐震メニュー2001」の見直しについて
諸井委員から、資料10-6に基づき説明があった。
・
前回の議論を踏まえ、耐震メニューの概念を、@施主を対象とした安全レベル、A設計を対象とした耐
震等級、B自然を対象とした地震ハザードの3面(3軸)で表現した。
・ 3面にプロットした値は、Vision2000(安全レベル)、耐震メニュー2001(耐震等級)、建築学会荷重指針
(地震ハザード)を参考にしているが、今後議論が必要。
・
本図は、安全レベルと地震ハザードと耐震等級の関係をビジュアルに分かりやすく示した概念図であ
る。
(資料10-6についての討議)
・
「設計」の面と「施主」の面では、言葉のニュアンスが多少異なっている。「安全レベル」のステージで
は、実入力に対する実被害を表しており、「耐震等級」では、設計入力に対する設計目標を表している。
「500galの入力地震動に対し中損で止まるように設計した」というのと「実際に500galの地震動がきた際
に中損になる」というのは必ずしも一致しない。
→設計側から見れば、実際に出来る建物の耐震性能には分布があり確率論的評価となる。施主側から
見れば、壊れるか壊れないかの決定論的評価となる。
→設計用入力に応じて設計した場合には、実際にはそれより多少強めになる。
・
図中の矢印については、「安全レベル」の面から「耐震等級」の面への矢印も引けるのではないか。
・
「安全レベル」の面の発生頻度の表現が基準法の表現とは異なっている。
・
「概念」としては、この図で十分わかりやすくまとまっているので、今後この図の中の各パーツに関する
細かい検討を行っていけばよい。
翠川主査から、資料10-5に基づき説明があった。
・
前回の諸井委員作成の図に、地震ハザードの面では、確率論的地震動レベルだけではなく、シナリオ
地震による地震動を加えた。耐震等級の面では、地震動の指標を応答スペクトルとし、現行基準法との
比較を加えた。
(資料10-5についての討議)
・
応答スペクトルは、建物によっても異なるため、地震ハザード側の指標と1対1では対応しない。指標と
して妥当か。
→実際の設計では、加速度などでは設計しない。応答スペクトルは震度とも対応がつくので指標として適
している。
・ 現行基準法のレベルは、耐震等級の3級くらいではないか。
→ならば、耐震4級以下は、基準法(=最低基準)以下ということになり、設定することに意味がなくなる。
→軽損、無被害を耐震メニューの定義に従って捉えれば、基準法のレベルは耐震4級程度であるとも考
えられる。
→何れにせよ耐震等級設定については、現行基準と照らし合わせて再検討する必要がある。
・
「耐震等級」は、必ずしも明確に線(区分)を引かなくてもよいのではないか。
→理論上は、どのレベルの入力に対しどのレベルの被害という点を自由に設定できるはずである。
→図の左下に行くほど耐震レベルは高く、右上に行くほど低いというグラデーションのような設定でもよい
のではないか。
→耐震メニューの運用を考えると、耐震等級にはデジタルな段階分けがあった方が使いやすい。
→耐震等級の区分は実態的には3区分(松竹梅)くらいではないかというイメージがある。その最低ランク
は、基準法のレベルである。
・
地震ハザードの面に、シナリオ地震をどう入れ込むかが課題としてある。
→シナリオ地震は、確率論的地震動分布とは別の使い方になるので、必ずしもハザードカーブに載せる
必要はないのではないか。
山根委員から、資料10-4に基づき説明があった。
・ 「耐震メニュー2001」では、安全レベルを「設計対象とする地震動に対する供用期間中の遭遇確率の大
小」という意味で設定していたが「重損以上の被害を受ける確率の大小」という表現が誤解を招いた。
・ @「再現期間2000年の地震動レベルに対して中損に留める」のが安全レベルS、同1000年ならばA、同
500年ならばBと言ったように被害レベルを固定し再現期間を変動させるか、A「再現期間500年の地震
動レベルに対して無被害に留める」のが安全レベルS、同軽損ならばA、同中損ならばBといったように、
再現期間を固定し被害レベルを変動させるような設定方法がわかりやすい。
・
再現期間が余り長いと地震動レベルをイメージし難いので、上記Aの方が分かり易い。
・ 学会荷重指針における再現期間も最長500年、基準法の「極めて稀な地震動」も500〜600年である。
・
「安全レベル」という尺度は、独立ではなく基本的には「耐震等級」とリンクしている。従って、「安全レベ
ル」は無くても構わない。
・ 図3,4,5,6は、現行基準法と高層建築物等の設計時におけるレベル2地震動のイメージを建物被害レベ
ルを縦軸に地震動レベルを横軸にとった図上に表したものである。うち、図3,4は、「地震動再現期間に
従属した安全レベル」の設定とともに表したものであり、図5,6は、「建物被害レベルに従属した安全レベ
ル」の設定とともに表したものである。
・
高層建築物等の設計時におかるレベル2地震動は、最大加速度、最大速度等で比較すると基準法の2
〜3割増程度のイメージである。
(資料10-4についての討議)
・ 免震の場合は、1級と2級の区分があるのか(できるのか)、という疑問がある。
→耐震メニューの運用方法を考えると、まず安全レベルを決め、そこからハザードを考慮して耐震等級が
決まり、その後に「それであれば免震にしよう」といった判断が入ってくるのではないか。
→その場合、耐震2級を目標に「免震工法」を用いてつくったら、結果として「耐震1級」になってしまった、
というケースはありうると思う。
→超高層や免震は、自ずと最高ランクに近い等級になる。
・
理想的には、耐震等級はハザードを考慮して設定すべきではないか。
→建築基準法による最低レベルは、ほぼ全国一律に定まっている。ハザードから独立した「耐震等級」も
必要ではないか。
・
安全レベルが必ずしも必要ないという考え方は、資料10-4における「耐震等級」の定義に「安全レベ
ル」の内容を含めて考えてしまっているからではないか。元々両者は独立のものではないか。
・ 「耐震等級表」で等級ごとに震度階が1段階ずつずれていくというのは、現実的ではないのではない
か。
→しかし、実際にどのように線を引くかを決めるのは難しい。
・ まずは設計の実態(現場)から見て、資料10-4の図3,4の耐震等級の線の傾きが、数値的に分かるよ
うな図を試しに作ってみたい。
→図の横軸は、「再現期間」等は考えずに、直接的な入力時震動の大きさで構わない。
5. 次回日程と次回の検討内容
(ア) 次回を2003年1月23日(木)14:00〜17:00で開催することとした。
(イ) 次回小委員会での検討内容
@
設計荷重指針改訂版の内容について(石井委員)
A
耐震メニュー概念図の各パーツのブラッシュアップ
1) 地震ハザードについて(石井委員)
2) 安全レベルについて(片岡幹事)
3)
耐震等級について(設計現場での実態ベースのプロット)(山根委員)
以上