■ 表 彰  一般社団法人日本建築学会北海道支部
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日本建築学会北海道支部技術賞審査経緯・講評

2014年 審査経緯・講評

 日本建築学会北海道支部技術賞表彰規定 第7条第2項に基づいて,支部技術賞選考委員会を構成する委員の確認をした後,委員会を計2回 開催した。 初回の技術賞選考委員会では,応募資料から推薦者となっている選考委員を選考に加えないこととして,応募された下記5件(応募順・技術名のみ記載)の内容について協議した。

(a) 放送機能維持に配慮した建物上鉄塔における制振補強技術の開発
(b) 地域シーズを活用した地域住宅の実現と普及
(c) 北海道生まれの耐震・断熱改修工法 −既存木造住宅の壁内気流止め及び接合部補強・壁耐力向上技術−
(d)地場材「札幌軟石」による景観づくりと伝統的技能の継承
(e)地場で生産・加工したカラマツとRCを組み合わせたトライーハイブリッド構造の開発

以上5件について,選考委員会で技術内容を把握した。特に追加資料の提出は求めず,また選考委員の追加は行わずに選考を進めることとした。 その際,表彰技術候補の選考方法は,募集要領の選考基準を「地域性・独自性」,「有効性・新規性」,「継承性・継続性」の3つの観点に分け,それぞれの観点ついて各委員の3段階評価による採決の後,協議によって決定することとした。 その後,2回目の選考委員会において,協議・採決の結果,上記(c)および(d)の2件を表彰候補技術として選定した。選定理由は以下の通りである。

(c)北海道生まれの耐震・断熱改修工法 は,「地域性・独自性」,「有効性・新規性」,「継承性・継続性」のすべての観点において優れた技術と評価された。 特に,少子高齢・過疎社会に入る北海道内の社会構造の変化を背景に,既存の戸建住宅の耐震および断熱改修工法の開発とその普及は極めて重要な地域課題と言える。 北海道内における住宅の長寿命化および安全・安心・快適性が得られるための建築技術の普及によって,今後,北海道外への技術の継承などが期待される。

(d)地場材「札幌軟石」による景観づくりと伝統的技能の継承 は,「地域性・独自性」,「継承性・継続性」の観点で高い評価を得た。 具体的には,北海道の地産材である札幌軟石を活用した長年にわたる景観づくり,および札幌軟石の伝統的な建築技能の継承について高く評価された。 今後は,地産材としての札幌軟石の活用,技能継承のための後継者育成などが期待される。

 選外の(a),(b),(e)についても,「地域性・独自性」,「有効性・新規性」,「継承性・継続性」のそれぞれの観点で高い評価があり,選考委員会で協議を重ねたが,上記(c)および(d)に及ばなかった。 技術賞選考委員会より,上記(c)および(d)を表彰技術候補として支部役員会に報告・審議した結果,2014年度 日本建築学会北海道支部技術賞として表彰することが決まった。

(文責:斉藤 雅也)


2013年は該当者なし

2012年 審査経緯・講評

  本賞は、北海道における創造性豊かな建築・都市に関する技術の開発者、継承者等を表彰することにより、北海道の建築界の技術の向上に資するために設けられた賞である。2012年11月15日〜2013年1月15日の応募期間に3件の応募があった。  北海道の建築界の技術の向上に資するものであることを,地域性、独自性、有効性、新規性に加えて継承性、継続性の6つの観点から評価する評価基準に従って、第6回北海道支部技術賞選考委員会を計2回に加えて、専門選考部会1回を開催して審査した結果、1件の表彰対象者を決定した。  当該技術の特徴として以下の点が挙げられる。
  受賞の亀田工業株式会社は、江差町を拠点において、地域柄 主に日本海側に点在する漁家建築の保存修復を通じて歴史的建造物の保存改修技術の習得を積み、国指定重要文化財旧中村家住宅保存修理工事(江差町、1982年3月竣工)を始め、近年では国指定重要文化財旧笹浪家住宅保存修理工事(上ノ国町、2008年8月竣工)、国指定重要文化財「八窓庵」等復旧工事(札幌市、2008年8月竣工)を行い、30年以上の永きにわたり国や北海道、市町村の指定有形文化財の保存修理工事を担ってきた。これら北海道における歴史的建造物の保存・修復工事の多くは、特に積雪寒冷地の特性から生じる課題を科学的かつ経験に基づいた技術、技能によって遂行し、北海道の文化財の維持に貢献してきた。
 地域特性に配慮した技術の一つには、凍害に弱い軟石材を基礎に用いる場合の保存・修復技術がある。上ノ国勝山跡(たて)内米・文庫蔵組立復元工事では、基礎上部の笏谷石(しゃくだにいし)を凍害に強い札幌軟石に置き換え、地面下の貴重な基礎材料であるバン屑(硬質粘土材)の劣化部分補強と凍結深度を考えた保存・修復技術である。また北海道指定有形文化財旧檜山爾志(にし)郡役所庁舎保存修理工事では、笏谷石基礎を凍害からまもるために暗渠排水を施すことにより、積雪寒冷地に建つ歴史的建造物の現状の構造等を損なう要因を最小限に抑えた。
 外壁漆喰壁の凍害対策としては、国指定重要文化財旧中村家住宅保存修理工事では石灰と貝灰の比率を変えて撥水効果と耐久性を向上させた。あるいは五稜郭跡箱館奉行所庁舎復元工事では、漆喰の稲藁にクローバーを混入させて微生物の発酵分解の効果による工期短縮を図るなど寒冷地での課題を解決してきた。
 受賞者は、これら北海道の固有の伝統的建築技術・技能の多くを保有しており、道内の歴史的建造物の保存のために、積雪寒冷地での伝統的建築技能の継承と後継者の育成に取り組んでいる。選考基準にある地域性、継承性に相当し、北海道の建築界の技術の向上に寄与している。よってここに日本建築学会北海道支部技術賞を贈るものである。

(文責:佐藤 孝)

2011年 審査経緯・講評

  本賞は,北海道における創造性豊かな建築・都市に関する技術の開発者,継承者等を表彰することにより,北海道の建築界の技術の向上に資するために設けられた賞である。2011年12月15日(木)〜2012年1月15日(日)の応募期間に2件の応募があった。  北海道の建築界の技術の向上に資するものであることを,地域性,独自性,有効性,新規性等の4つの観点から評価する評価基準に従って,第5回北海道支部技術賞選考委員会を計2回開催して審査した結果,1件の表彰対象者を決定した。  当該技術の特徴として以下の点が挙げられる。 ・厳冬期には-30℃を下回る陸別町において,夏冬の寒暖差70℃という厳しい気候風土から児童達を守り包み込む空間とするため,RC造壁を配置した校舎の東西北面は外断熱で熱負荷を抑制するとともに,耐震性能,耐火性能,防音性能を確保し,南面は開放的な木造の柱と曲面格子梁を用いて暖かな日差しを取込むことにより,熱負荷コントロールと構造形式を合致させた建築形態とし,ダイナミックで温もりのあるハイブリッド架構を実現している。 ・RC造架構は,耐震性能を負担するだけでなく,カテナリー曲線を活かした木造架構端部に生じるスラスト力を処理することで,木造架構屋根形態の自由度を高め,新しい自由曲面と木造格子梁の意匠を実現している。 ・木造とRC造の接合部は,せん断力と圧縮力のみを伝達する極めて簡素なボルト接合とし,木材の軽やかさ,柔らかさ,暖かさを阻害しない意匠としている。 ・ななめ配置の格子梁は,一方向を2次曲線で構成し,直交梁を短い直線材に近似した構成とすることで,鉄筋とエポキシ樹脂による梁交点の両方向剛接合を可能にし,施工性を向上させている。 ・陸別町近辺の森林からのカラマツ・トドマツ材を,構造材から内装材まで各々の特性を活かして適材適所に使用することで,地場産業に一定の経済効果をもたらし、また建設時から児童や地域住民を対象に,現場見学会や木構造材への寄せ書きイベントを実施し,さらに子どもたちから地域住民まで,本建物を日常的に利用することにより,地場産業への意識と誇り,愛着心を向上することができた。  以上のように,当該技術は,アーチ効果による架構形態,集成材の2次曲線加工および施工技術により,木造とRC造のハイブリッド構造による新しい建築形態を実現し、さらには地場産業への誇りと愛着心を醸成することにも寄与している。よってここに日本建築学会北海道支部技術賞を贈るものである。
(文責:緑川 光正)

2010年 審査経緯

 第3回北海道支部技術賞選考委員会を3回開催した。2009年12月15日(火)?2010年1月15日(金)17:00を応募期間としたが申請がなく、第一回委員会で2月16日(火)17:00まで延長することとし、選考委員は支部長と学術委員長とし、応募内容によって別途委員を依頼することとした。延長の結果、4件の応募があった。第二回委員会で、4件の内容を検討し、1件は候補技術の結果データがまだ不十分で今後の検証を待つべきとの判断があった。他の3件については、いずれも実用実績があり、かつ冬季における雪庇防止装置、換気廃熱を利用した融雪システム、簡易な温熱シート利用のコンクリート養生方法など、北海道支部技術賞にふさわしい内容であることが評価された。ただ、本賞は原則1者であることが議論され、昨年該当がなかった点、および今後の本賞へ応募への啓発、さらに表彰対象者数の但し書きを鑑み、本年度は3件の授賞とすることとした。第三回委員会で、第二回委員会の選考過程及び結果を了承した。  

2008年 審査経緯・講評

  本賞は、創造性豊な建築・都市に関する技術の開発者を表彰することにより、北海道における建築界の技術の向上に資することを目的として設けられた賞である。建築雑誌の10月号に応募要領が掲載されたが、応募は1件しかなかった。
 選考基準は、北海道の建築界の技術の向上に資するものであることで、地域性、独自性、有効性、新規性の4点を評価項目とした。
 本件の開発思想は、仕様規定から性能規定への改定、及び、地球温暖化防止対策としての省エネルギー基準の整備見直しを受け、高齢者対応、耐久性・省エネルギー、環境共生を開発思想として、外断熱の「BES−T構法」を開発した。この構法の特徴として
 1)外断熱構法  構造躯体をSEベストボードで覆い、熱橋と内部結露を抑制する。
 2)基礎断熱と床下換気システム  基礎断熱、防湿土間コンクリート、床下換気システムを導入し、床下の湿気と床面温度の問題を解決した。
 3)24時間換気システム 安定した室内空気環境と、換気による熱ロスを熱交換型換気(第1種)の採用で、省エネを実現。
 4)接合金物 接合部に構造金物を採用し、強度向上、施工合理化、品質の安定を実現。
 5)エンジニアリングウッド  エンジニアリングウッドの採用で、構造躯体の強度向上、安定品質の確保と、ベストEボードで壁の面耐力及び防蟻性能の向上。
 6)高性能断熱サッシ 熱ロスが大きい窓にPVCサッシとLow−Eガラスを採用し、熱、雨、騒音をシャットアウト。
 7)バリアフリー 高齢化社会に向け優しく快適に生活するために、バリアフリーの設計思想を導入。
 8)プレカット 品質の安定した構造躯体の供給と、現場でのゴミの削減、工期短縮、施工合理化を実現。
 上記1)〜8)の通り、住宅メーカーとして、住宅全体の諸問題について、積極的に取り組んでおり、総合的に判断して、本件は技術賞に価すると判断した。
今後、断熱材の取り付け方法、及び、外壁の防火に関する開発をお願いしたい。
(文責:武田 寛)
2010.6.1 更新
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