2007年度
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大学の部
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金賞 |
南 瑛記君 |
北海道大学工学部建築都市学科 |
engrave−海の炭の路 |
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産業遺産再生と呼ぶのが相応しいのか、炭鉱跡のコンバージョンである。かつての記憶を再構築しつつもその気配を大切に、しかも新鮮に新しい機能を潜入させていく手法は図面を見る限り空気感が伝わってくる。炭鉱の持つ独特な暗さや不透明感を味に変化させ、よくみるとほとんどが新しく設定されているにもかかわらず、記憶をつぶすことなく生き続けさせることに成功している。バランス感覚の良い秀作は金賞に値する。
(文責:小西 彦仁君) |
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金賞 |
渡辺拓哉君 |
室蘭工業大学建設システム工学科 |
650−greenfieldbreakforest− |
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その思い切りの良いタイトルにまず目が奪われ、次にその色づかいに何かを感じ、そして全体の図面のレイアウト、表現、どれをとっても一級品であることは間違いない。私の知る限りでの卒制のプレゼンテーションの中ではトップワンに位置する。宿泊室の空間にまだまだ密度が足りなかったり、斜めにそびえ建つフィンがちょっとオーバースケールだったりはするものの、ストーリーやドラマを充分に感じる構築性はあまりにも秀逸である。私個人としても、いじくりまわす建築が横行している建築界の中で建築の持つ価値というのはこんなプリミティブなことなんだと教えられた気がする。
(文責:中山 眞琴君) |
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銅賞 |
遠藤 光君 |
北海学園大学工学部建築学科 |
音のランドスケープ |
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都市にはどれほどの量と種類の音が存在するのであろうか。我々が気づかないほど麻痺してしまっている騒音や、心を左右する自然の音、創造された音楽。私達はなんとなくそれを受け入れながら生活している。そんな日常の中に建築というフィルターを通して音をランドスケープし、建築化させた作品がこれである。そのオリジナリティーあふれる美しい造形、素材の使い方や四角錐の合わせに何か「新しさ」を感じた。音という着目点もなかなか良い。建築化する上で人と音との関係性が不明瞭なのと、機能性と形態の論理性が弱く感じられた点が残念である。
(文責:中山 眞琴君) |
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銅賞 |
青木駿亮君 |
室蘭工業大学建設システム工学科 |
PARALLEL−thick wall museum.House in wall.− |
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美術館と住居がネガ・ポジの関係で1つの箱の中に立体的に展開している作品です。大きさの異なる展示室と、その隙間にありながら決して出合う事のない住居が、上からの光のみを共有して、共生しているイメージが、モノクロームのプレゼンテーションの中で文学的佇まいをもって表わされ、又模型の中に表現されている2本のパラレルなスリット(展示室も住居もオープンスペースも貫通している)が作品をより多義的なものに感じさせています。
(文責:上遠野 克) |
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短大・高専・専門学校の部
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金賞 |
田中 茂君 |
札幌建築デザイン専門学校建築工学科 |
個と群から生まれる関係性の再構築 |
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田中君の案は現在の住宅地における一般的な配置計画を解体して、敷地いっぱいに平面計画を広げ中庭を取ることにより、プライバシーを確保しつつも高さの違う屋根に人がのれそれが近隣とのコモンスペースともなりえる。この住居が展開していくことにより街が立体的につながり新たな住環境が再構成される期待感が評価され金賞となった。
(文責:小西 彦仁) |
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銀賞 |
竹下 恵君 |
札幌市立高等専門学校インダストリアルデザイン学科専攻科 |
余市のワイナリー |
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CADによる図面が並ぶ中、2mを越える2枚の手書き図面は、魅力的だ。全てを鉛筆で描ききった潔さとともに、丁寧な表現(やや力強さが欠けるが)は、集中した設計者の姿勢として、評価された。ただ、フィールドパターンと建築との融合や、ランドスケープ、空間性の魅力づけには、工夫の余地が残る。描ききったということで満足することなく、構想の提案力を高めること、一本の木を力強く、魅力ある姿に描く研鑽を続けて欲しい。何度も書き直し、手を加えることで、より印象的な魅力ある提案になるだろう。
(文責:渡邊 広明) |
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銅賞 |
細川義人君 |
北海道職業能力開発大学校建築施工システム技術科 |
矩形中の地形 project landform in the rectangle |
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札幌都心部の典型的な街区を敷地として選び、そこに建つ建築物の延命を図りながら場所の魅力を高める提案である。街区全体に施す手法を「ボイド」、「削る」、「補強」の3つに限定することで、多様でありながら秩序のある個性を作り出すことに成功している。しかし、どのような魅力が得られたかについての表現が弱く、総花的なのが惜しまれる。魅力とは、格子状街区における新しい風景なのか、公共スペースの居心地のよさか、テナント空間の性能向上と安全性確保か、環境負荷の削減なのか。どれも深いテーマであるが、重要だと思うものを果敢に探求することで案の個性と強度を獲得できたのではないか。
(文責:加藤 誠) |
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工業高校の部
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金賞 |
佐藤裕美君 |
北海道札幌工業高等学校建築科 |
Stage〜play ・ Scenery ・ Rest〜 |
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道の駅をテーマに、「主旨、原点、基本概念、空間形成コンセプト」と、タイプスタディや施設が成立する関係性等について、建築プロセスとして、提案内容に至る論理を丁寧に整理し、位置づけている。さらに、建築の自由で伸びやかな展開や、建築周辺も含めたデザインの熟度は高い。模型、CGと多彩な表現を行いつつ、一つひとつの丁寧さが完成度として評価できる。さらなる研鑽が楽しみです。
(文責:渡邊 広明) |
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銀賞 |
對馬彰太君 |
北海道旭川工業高等学校建築科 |
北彩都あさひかわ「Back Street」 |
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高校生のレベルを超えた素晴らしい作品です。ともすると、街の裏側になってしまうショッピングモールと高架下スペース及び街路を複合利用する計画案ですが、プログラムとプランニングの内容・説明共とてもよく考えられています。もう少しアクティビティの「楽しさ」「にぎわい」がプレゼンテーションにも表現されていたらより良くなったと思います。
(文責:上遠野 克) |
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銅賞 |
永江俊祐君 |
北海道函館工業高等高校建築科 |
新函館市民体育館 EVOLUTION〜新たなる進化の糧に〜 |
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函館湯の川地区に現存する市民体育館の改築構想案である。設備の整った広く使いやすい体育館づくりをテーマに、来場した人がリラックスできるようにサンルーム、カフェテリアを設けている。前庭を広く確保しながら二つのメイン・サブのアリーナのブロックを機能的に配置し、そのアリーナのアーチ状の二つの屋根が外観デザインの特色となっている。図面には、機能別に色分けしたプランや外観パースを丁寧に表現していて、その力量を評価したい。
(文責:齊藤 徹) |
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銅賞 |
伊藤しずか君 |
北海道室蘭工業高等高校建築科 |
「三角関係」〜新しい第三の観光地〜 |
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美術館のない室蘭市で、地元に関わる芸術家の作品を市民や観光客に触れてもらいたいという意図を、しっかり持った美術館の提案である。建設地を測量山と白鳥大橋に対し三角形の位置になる港湾用地を選び、測量山と白鳥大橋のその日の時間や四季を感じてもらえるように、屋上には屋根付きの広い展望スペースを設けている。多くの人が訪れる第三の観光地になって欲しいというテーマが、長円形の組み合わせによる特徴のある外観に表現されている。中央部を講演の場に、展示室を吹き抜け空間にするなど、基本的な空間構成力に優れている。模型を丁寧に制作している点も評価できる。
(文責:齊藤 徹) |
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