■ 表  彰  (社)日本建築学会北海道支部
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2009年度「卒業設計優秀作品(日本建築学会北海道支部賞)」作品・講評


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2009年度

大学の部
銀賞

大瀬戸雄大君

北海学園大学工学部建築学科 Heritage −Project in Niseko

 北海道ニセコのスキーリゾート地に計画された宿泊施設である。近年多くの外国人が別荘やコンドミニアムを購入している地域でもある、これらの場所は建物どうしが隣接し自然との関係が薄れてきている。そこでこの計画はニセコの自然や気候環境を体験でき四季の変化を楽しむ施設として森の中に考えられ、光や樹木、冬期は積雪2.5mとなり建物がすっぽりとうまり屋根の上が通路となるなど様々なシークエンスが展開される空間となっている。美しい自然の中に樹木をよけながら計画された樹状の平面、さらに床を浮かせることにより最低限の建設影響で自然を守る姿勢など、内部空間と合わせて美しいコンセプトがよみとれる秀逸な作品である
(文責:小西 彦仁)

銀賞

堀内 敬太君

北海学園大学工学部建築学科 ともに紡ぐもの

 夕張の炭鉱住宅を舞台とした介護施設の提案。プレゼンテーションが淡白であり作品性としては地味な作品であるが、介護のあり方、炭鉱住宅の再生など、社会性のある問題意識に立ち魅力的な空間を提案している。炭鉱住宅群の住棟間を内部化し介護施設、食堂、学習の場、図書室など様々な機能を挿入し新たな人のつながりを生み出す発信型の介護施設である。コミュニティの崩壊から環境問題まで多くの問題に対する具体的な回答を現実的でやさしさのある空間でまとめている力量が評価に値した。
(文責:菅原 秀見)

銅賞

林  号太君

北海道工業大学工学部建築学科 うつろいの家

 建築は実体を伴う。風土や時間までも引き連れる。現実に建築界はどうであろうか。何か実体感のないアイデアだけの本質を忽せる作品が主流になりつつある。各界からの批判が多いのはこのためである。実体になると急に脆弱で美しくないのだ。都市をつくる強度がないと読み替えても良い。さて「うつろいの家」を見た時にそのカテゴリーかと思った。しかし読み解いているうちに非常に未来を感じたと同時に美しい形態を想像できたのだ。プレゼンテーションだけが美しいのではない。文句なく建築としてのセンスが結実している。家具や道具と建築との間にはまだまだ解決しなければならない問題はあるが、「建築」に希望の光をあてた一作であることは間違いないだろう。
(文責:中山 眞琴)

銅賞

清水謙次郎君:

室蘭工業大学建設システム工学科 the other side −旭川買物公園再編計画−

 北海道内の多くの都市が抱える中心市街地の空洞化という問題に対し、旭川を舞台にその原因とされる自動車社会という現実を逆手に取って解決を図ろうという意欲的な作品である。特にこの作品を魅力的なものにしている点は、建築内において人と自動車を等価なものとして扱い、それらを立体的に関係付けることで今までにない新しい空間を提案していることが挙げられる。また、新しい空間を実現するためにヴォイドやメッシュによる外皮という建築手法を効果的に取り入れていることも高い評価を得た。以上を総合的に判断して銅賞にふさわしい作品であると判断された。
(文責:小倉 寛征)

短大・高専・専門学校の部
金賞

瀬戸 孝典君

札幌建築デザイン専門学校建築工学科 PRIMING 〜起爆剤〜

 旭川の買物公園に集客の起爆剤として公園をはさんで商業施設を配置した。買物公園のアクティビティと商業施設のアクティビティが立体的に直交しており、新たな賑わいの核の誕生を予感させるものがある。特に買物公園をはさんでステージと客席が向かい合う劇場では劇場としての機能にとどまらず、建築と都市を結ぶダイナミックな力を持っている。提案されている空間は都市を正方形に切り取っているが、コンセプトを明快にするには都市と建築の境界をあいまいにする方法もあったと思う。
(文責:菅原 秀見)

銀賞

後藤 祐貴君

釧路工業高等専門学校建築学科 そこに適える:杜の城

 伊達市の文化・歴史的財産の再構築を、ガラスと鉄骨の表層の中に「杜の城」として複合的に計画した作品です。 内部空間での図書館の書架の構成、記念館の展示スペース等に歴史・文化・自然をモチーフにしたすぐれたインテリアデザインがありますが、各フロアーで完結するだけではなく、重層的に展開され、ガラスのファサードを通し、外部にまで表現され、又石垣の土台部分も建築的な抽象化がされていたなら、伝統的なモチーフ+現代的素材以上の提案が出来たと思います。構成、表現共にすぐれた作品です。
(文責:上遠野 克)

銅賞

伊藤 大介君

札幌建築デザイン専門学校建築工学科 透過・等価・通過 〜隣人との空間〜

 成熟した住宅地において、密度をほぼそのままに見直すことで、新たな市街地のありようを提案している。住宅と敷地境界の関係を見つめ直し、小さな住戸をばらばらに配置することで、住棟間が隙間から新たなアクティビティの場となり賑わいを生むということだ。人口の増加しない地域での市街地の再編は、施設の集約に目が行きがちであるが、散漫とすら感じる全体の配置が、はらっぱのような懐かしさや賑わいを感じる空間となっている。各建物も様々な住人を想定し綿密に計画されており、現代的なプレゼンテーションによって現代の提案として成功した秀作である。
(文責:齊藤 文彦)

工業高校の部
金賞

若林  賢君

北海道名寄産業高等学校建築システム科 Nayoro Sunpillar Station 746

 作者は若林君という。この作品を作れることのできた学生の名前を知りたかった。というくらい過去のどの作品よりも遥かに越えた超A級の作品である。へたをすると大学の部より迫力があった。ホーム、駅舎、アーケードを連結し、新たな商業空間を生みだそうとする意欲あるコンセプトでまとまっている。名寄の現時点での問題点を引き出し、新たなデザインで治癒し商店街と駅をリンクし活気を呼び戻そうとする真面目で凛凛しい作品である。ダイヤグラムのスケッチも上手だし、プレゼンテーションも一級である。建築形態は高校生のレベルを超えている。将来、決して形態操作だけにデディケートしないよう願う。もっともっと建築は広い視野が必要であるから。建築界が孤立しないためにも。
(文責:中山 眞琴)

銀賞

尾形 友也君

北海道札幌工業高等学校建築科 Place for finding oneself

 生徒にとって生活の場といえるほど長い時間をすごす学校。自らを発見する場としての学校を考え、空間にゆとりを与え、しつらえにも配慮したことが特色となっている。単調になりがちな学校のデザインに、2階エントランスまでのアプローチ部を楽しくするための壁を設けるなどの工夫も見られる。また、ただ広さを確保するのではなく、校舎の配置をL型としたり、時計塔を設けるなど、学校生活に多様性を確保する工夫をしており、思いの詰まった作品であることが評価された。
(文責:齊藤 文彦)

銀賞

池本  進君

北海道札幌工業高等高校建築科 森の中の小規模小中学校

 森の中に建つ小規模小中学校」に適した学校運営方式と空間構成を丁寧な考察により決定していることが高い評価を得た。中でも従来の片廊下型校舎の持つ問題点に対し、建築空間に「まとまり」「連続」「変化」を与えることで解決を図るという提案と、それを実現した平面計画に設計の力量を感じる。また、複雑な屋根形状、構造材や外装材の選択には周辺環境への誠実な配慮を読み取ることが出来る。結果として森の中に建つ学校にふさわしい表情を作り出すことに成功している。図面表現もしっかりとした技術を感じさせるものであることから銀賞がふさわしいと判断された。
(文責:小倉 寛征)

銅賞

小林 未来君

北海道苫小牧工業高等高校建築科 Stars☆ and the Moon☽

 この計画のよさはすがすがしくおおらかなところである。展望台の設計であるが、カフェや雑貨など複数の店舗が入る複合施設となっている。大きな楕円空間と直方体の空間のバランスも良く吹き抜けやオープンテラスなどがところどころに配され心地よい。特に楕円空間の屋上テラスは開放的でタイトルのように夜空の月や星を見るには絶好の場所となっている。
全体的にバランスよくまとめられた秀作である。

(文責:小西 彦仁)

2010.5.27 作成
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