■ 表  彰  (社)日本建築学会北海道支部
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2010年度「卒業設計優秀作品(日本建築学会北海道支部賞)」作品・講評


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2010年度

大学の部
銅賞

渡會 未希君

北海学園大学工学部建築学科 無時間の庭

 建築は技術の集積だけではないし、ましてや芸術化された建築もどこか不安定な気分にさせられる。統合的要素が求められるのである。CADに染まった建築制作も、どこか悲しい現実なのである。
その中で、この「無時間の庭」はどこかなつかしい、カリカリ書いていた昔を思い出させてくれる。力強く、詩的で美しい。人間精神復活装置のような作品であり、個人的には一番好きな作品だ。ただし何かひっかかる。作為に満ち溢れているのである。この手の作品はその作為性の現陰も作品の良悪になってしまう。何かプリミティブさが感じられない。精神とは純化された空間でのみ喚起される。
利休は言った「叶ふハよし、叶いたがるハあしゝ」。
(文責:中山 眞琴)

銅賞

山下 竜二君

北海道工業大学工学部建築学科 森の境界〜北海道工業大学学生寮〜

 北海道工業大学のキャンパスを囲むように計画された学生寮を主とする建物である。現存する学校林と混ざり合いながら四周を囲む計画は樹木との共生そして融合するための形を建築のフォルムに置き換える操作により決定しているところが醍醐味である。マッシブな大学の校舎群に対して対照的である。この建築の森を潜りぬけアプローチするシークエンスは特殊なものになるに違いない。しかしどこか均質化してしまっているこの空間が多少気になる。本当の森は均質でも飽きさせない。そこには不均質な現象(四季による)が存在するからである。もしこれに匹敵する操作がこの建築にあったならば、と思い銅賞に納まった。
(文責:小西 彦仁)

銅賞

松田  耕君

北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース 線の風景

 新たな風景をつくりながら札幌の都市周縁部に広がる耕作放棄地などの問題解決に取り組んだ計画。この計画を魅力的にしているのは、自然環境を克服すべく築き上げた防風林や区画割りという先人達の築いたインフラを尊重する建築であること、建築が拡張可能な「しくみ」を持ち、その拡張プロセスの提案があること、結果として生まれる新たな風景を印象的に描き出していることである。具体的な生活像や環境技術、農業生産性など検討すべき課題は残されているが、都市的規模の問題に挑む姿勢、時間の経過とともに一見すると価値が無くなってしまった場所や空間に今日的な価値や意義を与え直すことに成功している点を高く評価した。
(文責:小倉 寛征)

短大・高専・専門学校の部
金賞

金原 圭佑君

札幌建築デザイン専門学校建築工学科 知床再生記

 知床の海岸沿いに建つ歴史館、リノベーション住宅、バンガローの複合プロジェクトである。産業の後継者の減少や環境問題などの現実的な問題意識に立ち、ありのままの知床を見せることを建築の機能としている。海への視界を遮らない低層の歴史館から、より自然の深部へ誘われる空間構成、それぞれの空間のシークエンスが知床を見せるという設計意図を美しく建築化している。コンセプトを空間に置き換える技量、設計意図を正確に伝えるプレゼンテーション技術などによる総合力に加え、壁面で構成されたファサードが印象的な建築であり、金賞に値すると評価した。
(文責:菅原 秀見)

銀賞

坂入 聡美君

釧路工業高等専門学校建築学科 BOOK PARK−よりみちでつくる本とのであい人とのふれあい−

 「自然」と「ゆっくり流れる時間」にめぐまれたまちの未来に思いをよせて、既存の公園に「知る」「集う」「残す」のキーワードで本の丘(図書館)、集いの山(コミュニティー施設)、本の木(古本図書館)がデザインコンセプトのもと、複合的に設計されています。
それぞれのアクティビティーと建築の関係がよく考えられ、特に本の木は訪れたいと思う楽しさが表れています。個々の施設間の関係性、有機的なつながりがもう少し表現されていたら、よりみちのゲートからのシークエンスが、素晴らしいものになったと思います。
提案・構成共に優れた作品です。

(文責:上遠野 克)

銅賞

下平 雅也君

釧路工業高等専門学校建築学科 Natural Harmony〜建築と自然の調和〜

 建築に与えられた普遍的なテーマを表題とした作品である。勿論、自然界にあるような形態を用いるだけで「建築」が「自然」と調和するわけではない。しかしながら、作者は、自然界の様々なイメージをコラージュした施設を計画することで、考察を重ね、ひとつの独創的な作品に纏め上げた。実際の土地、実際の用途(子どもが利用する博物館)、自然界のイメージ(DNA、心臓、根菜類)これらを想定することで、本来建築に必要な役割とあるべき姿が見えてきたのではないだろうか。自然と調和する建築については、今後も考えてほしい。表現の一貫性とその努力に対し賞を与えるに相応しいと判断した。
(文責:齊藤 文彦)

工業高校の部
金賞

前田 洋平君

北海道札幌工業高等学校建築科 FBS Station〜街と人、自然と人との関わりあい〜

 駅と図書館、美術館の複合を明快でかつシンプルにまとめている。駅により分断される区域をそれぞれ「田舎」(自然)、「都会」と位置づけ、そこにある駅のありかたを心理的、動線的に分析し、違和感なく運用される現実的なイメージをもたらしている。空間構成は駅空間に「田舎」「都会」を結ぶ公共空間が角度を持って突き刺さっており、そのうえにギャラリーがあるというきわめてシンプルな構成である。建築の背景となるランドスケープも巧みにデザインされており、シンプルさの中から空間の豊かさを感じられる力作である。
(文責:菅原 秀見)

銀賞

吉田 崚真君

北海道函館工業高等学校建築科 MILLION 100万ドルの裏夜景

 高校の部の作品は少し優しく語らないといけない。これから大学や社会に出て日本を作る一員になってほしいからだ。私も含め多くの人が今回の震災で建築は無力だということを思い知ったからだ。
復興に向けて日本の建築や美しい風土が新しい法律で更にだめにならないことを祈る。
「MILLION」は日本の建築教育が多少理工学的ではないのかという気持ちにさせられた作品だからだ。きちっと制作されてはいるが、少し納得できない。「はこだて」を感じられないからだ。
もっと日本を美しく、風土や歴史に合った建物が今、日本の建築界に求められているのではないか。東京も北海道もどこも同じ工法、材料で建築を作るのはもうやめてもらいたいものである。それは我々大人が見本を見せるべき時ではないのか。

(文責:中山 眞琴)

銅賞

山下 希望君

北海道函館工業高等高校建築科 astronomical observatory of HAKODATE 宇宙の旅人

 函館に建つ天文台である。天文台としての機能に加えてカフェやミュージアム、研修室などを設けることで観光、学習、交流の機能をバランス良く持たせている。人々の活動の様子を伝える内観パース、家具デザインなど細部まで気を配る設計への姿勢が見られたこと、丁寧に書き込まれた図面、複雑な形態を再現した模型など作品への情熱を感じ取ることができるプレゼンテーションであったことが高く評価された。
(文責:小倉 寛征)

2011.7.5 作成
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