2011年度 |
大学の部 |
銀賞 |
田中 元君 |
北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース |
停留所のまち〜体感する風景 |
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まちを行き交う人の速度と路面電車の速度に着目し、疲弊する町を再構成したユニークな作品。車窓からの景色が暮らしの背景であり「まちづくり」のショーケースともなっている。奥行感のある空間が構成され、集まって住むことや町を使うことを上手く表現している。
図面構成、個別のデザインの洗練度、計画の緻密さはより高いものが期待されたため金賞にはいたらなかったが、2011年という特別な年において、暮らしの情景を提案しようとしたことを評価し、銀賞とした。
(文責:齊藤 文彦)
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銅賞 |
佐藤 友紀君 |
北海学園大学工学部建築学科 |
ゆるやかにそそぐ−イチバとともに− |
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小樽の妙見市場は戦後、樺太や満州からの引揚者により川の岸にバラック店舗をつくり商いを始めたのがはじまりである。それから70年余り小樽の台所のひとつを担ってきたが、
街の高齢化と過疎とともに市場の経営者自体も高齢化や後継者不足となり、縮小が強いられている。この市場に再び人が集まる新しい拠点にすべく計画が本案である、
川の上に建つ市場としての現市場を新しいスタイルとコンセプトで再生したものであり、やわらかでうねるような建築空間が川の上を這うように展開している。
現市場にはない親水空間などにより川との関係も生まれ場所性が最大限に表現され、新しい息吹と鮮度を感じさせる興味深い秀作となっているが、全体にもう一つリアリティーが不足しており心残りである。 (文責:小西 彦仁)
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銅賞 |
菅原 仁美君 |
北海道工業大学空間創造部建築学科 |
水の郷 |
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建築というものは最初この作品のようにぼんやりとしたイメージで白濁した気憶から晩起される。それは、きっと絵本のような物と同位なのかもしれない。
僕はこのような表現がとっても好きだし、実際、美しいとも思う。出しゃばっていない建築表現にも好感がもてる。でも、多分"金"になれなかった理由は、
建築へのアプローチの仕方(前菜といってもいいだろう)が単純だったせいかもしれない。表現力は素晴らしいのだけれど、肝心の建築がこれでいいのだろうか。
とっても何か、安易であるような気がしてならない。残念だが、決して埋没しているようには見えなかった。これだけの表現では、我々を納得させることができない。でも、やっぱり好き。 (文責:中山 眞琴)
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短大・高専・専門学校の部 |
金賞 |
井沢 祐哉君 |
釧路工業高等専門学校建築学科 |
CONNECT〜つながりの場〜 |
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釧路市の中心部の衰退に問題意識を持つ作者が、新しい集合住宅の提案により町に賑わいを取り戻そうとする計画である。
既存の「公共施設」や「まちなみ」を丁寧に分析した上で、「緑の動線」「変化していくファサード」「回遊性のある歩道」という3つの建築的手法を提案し、それらを建築デザインにしっかりとまとめ
あげている点が高く評価された。緻密なCGパースからは作品への愛着が感じられるとともに、概念図を用いた分かり易いプレゼンテーションにも好感が持たれた。
以上を総合的に考慮して金賞にふさわしい作品であると判断した。 (文責:小倉 征寛)
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銀賞 |
大橋紗梨奈君 |
札幌建築デザイン専門学校建築工学科 |
散歩する図書館 |
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地方都市の町役場に隣接する盛土による閉鎖的な土地を元の勾配にもどしながら、接地性を計った図書館のプロジェクトです。
階段状の広場を昇りながら、ガラス越しに見える内部空間を感じ、又、エントランスから下りながらメインになる図書スペースへの天井高を含めた空間のボリュームを楽しみながらのアプローチは、外部の景観も取り込んだものです。丁寧に考えられた作品です。
吹抜に設けた2階の閲覧スペースの形状が楽しくデザインされ、外部の広場からも感じられる様ならより良くなったと思います。
(文責:上遠野 克) |
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銅賞 |
宮崎さおり君 |
札幌建築デザイン専門学校建築工学科 |
「自然」と一体になるホール |
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札幌市内に現在ホールのある場所での計画であり、敷地の選定から現在のホール建築への批評精神が根底にあることが伺える。
空間構成はシンプルである。ホールをはさみ東側に観客用のホワイエ、西側に出演者用のホワイエを設け、大通公園に面する南側の3層部分に両者が出会う交流ラウンジを設けている。ホールとしての平面計画、断面計画、交流ラウンジの具体的な機能のイメージなどに問題はあるが、吹奏楽の経験者としてバックヤードに豊かな空間を確保したこと、観客との交流の場を設けたこと、それらを立地環境に活かし明快に整理していることから銅賞に値すると判断した。
(文責:菅原 秀見) |
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工業高校の部 |
金賞 |
安喰 哲君 |
北海道名寄産業高等学校建築システム科 |
名寄えきよこ複合施設SNOW CRYSTAL〜(待ち時間を自由に過ごせる地元の巣)〜 |
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JR名寄駅に隣接する複合施設であるが、プログラムの組み立て方、
空間構成、デザイン手法、構造の発想、表現手法にいたるまで完成度が高い。雪の結晶のイメージと構造の合理性を背景とするハニカムのデザインが印象的な作品である。施設のテーマは市民の居場所づくりであるが、
市民の立場でまちが抱える問題を検討し、市民にとって必要な、まちにとって必要な「場所」のあり方を多くの議論を経て組み立ててきたプロセスが創造できる。作品の完成度の高さもあるが、
建築設計として考えなければいけないプロセスがしっかりしており、それがうまく表現されていることから、審査委員満場一致で金賞に値すると判断した。この作品の工業高校の建築教育に与える影響は大きいと思う。
ぜひ、幅広く建築教育関係者に見てほしい。(文責:菅原 秀見)
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銀賞 |
西牟田純基君 |
北海道名寄産業高等学校建築システム科 |
おもちこみち〜地元農家がデザインし続ける名寄の入口〜 |
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道北の名寄市に活気を呼び戻す新たな空間の提案である。地元農家が作る餅米による数種類のお餅を食べながらイベントが開催できる建築物であり、これにより街の再生を狙っているユニークな案である。北国らしく雪の結晶をデザインコードにY字型に建物が分節してやがて六角形となりそれが広がって行き各種類の餅を売るゾーンになっている。
切妻型の断面はヒューマンスケールであり屋台をも彷彿させ更に物見塔までもが同じモチーフでデザインされており一貫性の中にありながらバリエーションを持ち合わせている。
内部は作者によると「もちもちとした素材」と表記があり更に興味がわく。実際にこの様な空間が名寄市に出来てほしいとさえ思った秀作である。(文責:小西 彦仁)
(文責:中山 眞琴) |
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銀賞 |
宮川 和也君 |
北海道札幌工業高等学校建築科 |
The station of three pillars〜3つの複合施設〜 |
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道内での道の駅もすでに113となり、建築のプロトタイプとなりうるのだろう。この設計は、国道を挟む両側の高低差のある敷地を利用した3棟の建物による道の駅計画案である。矩形の3棟の施設が放射状に並び、段差ある敷地の段差解消と広場のような場所性を確保することに成功しており、銀賞とした。
シャープな施設構成にマッチした青地に白の図面表現も魅力的で高い評価を得た。最後に工業高校の卒業設計巡回展などもあると、生徒への刺激になるだろう。
(文責:齊藤 文彦) |
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銅賞 |
中谷 鴻君 |
北海道札幌工業高等学校建築科 |
過去になる「ミライ」を創る〜札幌カコ・ミライ資料館〜 |
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札幌の「過去」を知り「未来」を語り合うことで「まち」への愛着を育むための資料館である。卒業して札幌を離れることになった作者が、札幌への愛着を再認識したことから設計が始まっていることが興味深い。その愛着が作品への情熱となり、複雑な平面計画、独創的なデザインの設計をまとめることができたといえるだろう。
立体的で回遊性のある展示室配置とし、来館者に時間の移ろいを感じさせる工夫や、見学中の気分転換への配慮などリアリィテーを持って設計している点も評価された。
以上を総合的に考慮して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 寛征)
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