2012年度 |
大学の部 |
金賞 |
浦本 義幸君 |
北海道工業大学空間創造部建築学科 |
秩序のざわめき |
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若い建築家の作品に多いのだが、偶発的で形態的で理屈過多の建築に、私だけでなく多くの人が閉口している。というのもこれらの特徴を除いたら何も残らないからだ。
雑誌に取り上げられ有頂天になっている建築家よ、もっと時間に耐える建築を作ろう!と思っていたら、「秩序のざわめき」を審査。
なんだ、何とか風と思いきや、巨匠?達とは違うぞ。何かとっても幸福感を覚える。この類(失礼)はきらいなはずなのにどんどん引き込まれる。建物同士の関係も新たな「個」の有り方を考えさせられるし、微妙な変化は決して偶発的ではない。計算されているのに作為を感じない。2方向避難まで考えられている。ただただ美しいだけではないのだ。
私の中に長く記憶に残る作品となるだろう。
(文章 中山眞琴)
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銀賞 |
丹治 和仁君 |
北海道工業大学空間創造部建築学科 |
さまよえる遺骨たちーアイヌ鎮魂を願う納骨堂再建計画 |
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北海道の先住民族アイヌは死者を自然に帰す意味で亡骸を土葬にする。墓には墓標もなくまさに森の中の樹林の間に穴を掘り埋葬する。
文字がなかったアイヌは記録がなくその先住民族の調査のために北海道大学が発掘により人骨を収集し研究を行っている。
その亡骸を葬るための施設として計画されたこの建物は千歳川の支流に聖地をつくり、北海道全域から収集された遺骨をかつて埋葬されていた各地へ放射状に延びる軸線上に石棺を配列し安置する計画となっている。
それらの石棺の数の多い少ないにより自然にランダムな状態となり、それは一つの造形を成している。また軸線の中心には直径100m近い皿状の鉄の水盤が浮いており、「あの世」と「この世」を分ける装置として天水を受けている。さまよえる遺骨たちはようやくこの地に眠ることができる。
造形力を感じるこの作品のよさは、計画の根拠と手法が素直に受け入れることができることであり、大地にかすかに浮かぶ水盤の迫力である。これらが相俟って鎮魂に対する静寂感が醸し出された美しい秀作として評価された。
(文責:小西 彦仁)
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銀賞 |
前田 孝輔君 |
北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース |
まち、くべる、かま |
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急速な人口減少、高齢化社会を迎える北海道森町における「まち」と「産業」を支える建築の提案である。
建築を作ることで持続可能な地域を作りたいという思いに好感が持てる。その為に、従来から続く地域産業である「炭焼き」をベースに、持続的かつ前向きに生活を続けていくための社会モデルとそれらを実現する建築システムを提示した点、それらが緻密な調査と分析に基づく点を高く評価した。また、「炭焼き」と「地形」から生まれる建築郡が、必然性を備えた独自の風景を形成していくという提案も興味深い。建築の内部空間がより詳しく提示されればさらに魅力的な作品となっただろう。今後の展開に期待出来る作品である。
以上を総合的に考慮して銀賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 征寛)
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銅賞 |
阿久津 翼君 |
室蘭工業大学工学部建築社会基盤系学科 |
交錯する図書館−静かで賑やかな場所− |
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様々な大きさと角度を持つスラブが積み重なり、大小の隙間が視線と動線に多様性のある空間を作り出している。平面に見られる室と室の隙間が巨大なマスとしてのボリュームに特徴を与えている。ただ、立面における既視感や色彩計画、敷地設定については、整理されていない印象があった。コンセプトワークのみの表現やアート的な表現に陥らることなく真摯に建築に取り組む姿勢を評価するとともに、今後の期待をこめて、銅賞とするものである。
建築というものは最初この作品のようにぼんやりとしたイメージで白濁した気憶から晩起される。
(文責:齊藤 文彦)
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短大・高専・専門学校の部 |
金賞 |
臼井 寛弥君
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釧路工業高等専門学校建築学科 |
孤独死0(ゼロ)のまち |
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釧路川のほとりを舞台とし、孤独死という社会問題の焦点を当てた作品である。高齢者の生活と地域の関わりが少ないこと、地域に活気がないこと、これらを解決するという強い目的意識を基軸とし建築が構成されている。都心居住と商店街との複合は発想しては単純であるが、「小規模多機能ホーム」という生活支援の場やオープンスペースをつくり、裏通りでこれらの交流の場を巧みに結びつけている。分節された機能は柔らかい曲線を持つ大きな屋根で覆われており、建築全体に優しい表情を与えている。問題意識から目標の設定、解決方法が優れており、建築としても破綻なく綺麗にまとめらていることから金賞に値すると評価した。
(文責:菅原 秀見)
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銀賞 |
三木 翔平君 |
釧路工業高等専門学校建築学科 |
空間(くうのま) |
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利休は云った。「黒は古き心なり」
この作品(くうのま)は全体的にまっ黒である。
作者にとって、毛綱さんも安藤さんももう古き人なのかなと思えるほど良く似ている。線のタッチはばらばらで、まだスケッチ風とは言えないが、それでも何かを追い続ける姿勢はすごい。
建築の第一歩は模倣から始まる。決して辱めるつもりはない。全ての建築家はここから登るからだ。
これからも遺り遂げようとする意気込みを保ちつづけてほしい。
(文責:中山 眞琴)
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銅賞 |
大島 尚人君 |
札幌建築デザイン専門学校建築工学科 |
「自然」と「農業」 |
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農業の盛んな地方都市の街内に計画された農業体験施設です。ビニールハウスと4棟の施設で広場を囲む特徴的な屋根をもって多様なアクティビティが可能な場を、上手に形成していると思います。外観のイメージ、仕上のイメージもCGパースから良く感じとれます。冬期間の利用形態イメージ、又中央公園との関係性等の課題はありますが、テーマの設定、計画のまとめ方、プレゼンテーション等、優れた作品です。
(文責:上遠野 克) |
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銅賞 |
山田 竜平君 |
札幌建築デザイン専門学校建築工学科 |
delta space |
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この作品は、札幌市の旭山記念公園の西斜面に計画された美術館である。この斜面の扇状をコンセプトに造形を導き出している。扇形が持つ特徴である拡散と集合をキーワードに、そこに円弧による誘導性を導入して最終的には斜面と巧みに融合させながら計画された建物はランドスケープと一体となっている。
この場所の特性そして建物をつくる上でのコンセプトワークが破たんすることなく最後までまとめられている。この作品が持つ幾何学的造形と周辺環境をうまく調停しながらつくられていることが評価された。
(文責:小西 彦仁) |
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工業高校の部 |
金賞 |
天野 智佳君 |
北海道名寄産業高等学校建築システム科 |
むすびらき |
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北海道の多くの地方としてでは郊外での商業施設の繁盛により駅前の商店街が衰退している、この作品は名寄市の駅前商店街の活性化に正面から取り組んでいる。現存する店舗にひと工夫加える活用案、デザインコードの提案など古いものと新しいものを融合させようとする具体的な提案がこの作品の魅力である。また、「いとなよせ」と名付けられたスカイウォークで店舗を結ぶことにより、人々の心をつなぐ場を設けている。ここでは柔らかい光を生み出すために和紙を用い交流の場として優しい空間をつくっている。郷土愛に満ちたまちづくりの視点からディテールへの気配りまで豊かな振幅を持った作品であり、金賞として評価した。
この場所の特性そして建物をつくる上でのコンセプトワークが破たんすることなく最後までまとめられている。この作品が持つ幾何学的造形と周辺環境をうまく調停しながらつくられていることが評価された。
(文責:菅原 秀見)
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銀賞 |
秋山 愛斗君 |
北海道小樽工業高等学校建設科建築デザインコース |
HORIZON OTARU〜Roadside Station〜道の駅 |
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小樽市張碓に道の駅を計画したものである。「アオバト」をモチーフとして、その平面に店舗やレストラン、情報コーナーを納め地域の魅力を建築に盛り込もうとした力作である。
道の駅を時間消費型の商業空間とすることで、地域の魅力発信の場を創造しようとしている。構造、設備においても言及し、テナントに想定した民間企業や関係するJRに計画を説明するなど、これまでの高校卒業設計の枠を超えた行動力と表現力に銀賞を与えるものである。
(文責:齊藤 文彦) |
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銅賞 |
長谷川 歩君 |
北海道札幌工業高等学校建築科 |
イースター美術館「eggs」 |
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一般の人々が気楽に展示や美術学習が出来る新しい美術館の提案である。
様々な大きさの「卵形」の建築が並ぶ風景は、印象的でどこか楽しげな雰囲気を醸し出しており、設計者の意図する美術館にふさわしい建築を表現出来ている。また、搬入や管理、防災、警備まで配慮したゾーニングや動線計画をおこなうことで、デザインに具体性とリアリティーを与えることにも成功している。さらに、様々な色や表現手法を活用して個性的な建築デザインを上手にプレゼンテーションしている点も高く評価された。
以上を総合的に考慮して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 寛征) |
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銅賞 |
中川 一輝君 |
北海道旭川工業高等学校建築科 |
水の劇場〜流れる水と音〜 |
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旭川の買物公園に面して、水をイメージ化したイベント施設の計画です。コンクリート、ガラス、木といった素材でシンプルに構成され、又客動線、管理部門の計画がきちんとされています。何よりもの水面に映り込む内部のステージ客席のイメージがCGパース等で美しく表現されていて、高いレベルの作品になっています。建物周囲を全面芝生で囲っていますが、買物公園に面した所は歩行者が気軽に立入れる工夫がされると、より街にとけ込んだ作品になったと思います。素晴らしい作品です。
(文責:上遠野 克)
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