■ 表  彰  一般社団法人日本建築学会北海道支部
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2013年度「卒業設計優秀作品(日本建築学会北海道支部賞)」作品・講評


2013年度

大学の部
金賞

成ヶ澤はるみ君

北海学園大学工学部建築学科 [arc−reature]−軟石と暮らすストックミュージアムー

 ヴァナキュラー作品である。であるがこれがヴァナキュラー建築なのか、かなり読み解くのに時間を要した。というのも、そのヴァナキュラーらしさの表現がどこにもないのだ。それところが、アーキリーチャーと命名された建築生物は異様である。 大谷石の石切り場に見られるあの重く壮大な建築を超えた「何か」が何も画面から読み取れない明るくかろやかで楽しげだ。これも時代なのか、我々が化石化しているのか、べたつきのないヴァナキュラー建築ってこうなのかなと思いながらも未来は明るいぞとも感じた作品である。
(文責 中山眞琴)

銀賞

可香  葵君

北海道工業大学空間創造部建築学科 生命の諧調

  北海道東端の野付崎に計画されたランドスケープ化された装置はこの場所が持つ美しくも厳しい自然環境を受け入れながら可視あるいは不可視となり 海の潮位と現象を享受するための体感の場として美しく海面に横たわる。そのガラスの歩廊は潮位を読み取り設定されており満潮時には海面と同面になる。 繊細なドローイングはその情景を伝え一度は体現したいと思わせるほどである。ここで人間が持つ五感が改めて奮い立たてられ海面との距離感を感じながら ガラスの路を進む。この海に引かれたきらりと光る一筋の路は不変で有るが海の変化で多様化されるところにこの空間の美学を感じる。  (文責:小西 彦仁)

銅賞

井上 桂輔君

北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース 「赤金の森」

  渡良瀬遊水池に生まれた自然を再発見するための、「装置」としての建築の提案である。 敷地の持つ歴史と、その結果生まれた独自の湿原環境を丁寧に調査したうえで設計に取り組む姿勢を評価した。また、それらを可視化する水位計を備えた銅柱を配置するという提案に、構造や設備、素材への幅広い建築的視点を感じた。 一方で、描かれた建築自体にどこか既視感を感じる。形態について別の解法があり得たのではないか。更なる造形的な展開に期待出来る作品である。 以上を総合的に考慮して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 征寛)

短大・高専・専門学校の部
金賞

谷本賢耶君
山田浩史君

北海道職業能力開発大学校建築科 ZENIBAKOへの空間提案

  本作品は、かつて賑わっていた銭函運河に着目し、駅と運河を結ぶことで、海と山をつなぎ、豊かな自然を感じるZENIBAKOとして提案したものである。 建物単体ではなく、駅からの散策路や橋を一体的に整備し、地域に新たな価値を創造しようという意欲感じる案であった。 複合施設としての提案が少ない中、レストラン、ガーデン、図書コーナーなど複雑な構成にチャレンジし、一つの空間としてまとめ上げている点で、金賞とした。
(文責:齊藤 文彦)

銀賞

川久保 圭君

釧路工業高等専門学校建築学科 家っぽいグループホーム

  札幌市内郊外に計画されたグループホームの提案であり、はだしで歩くデッキに施設が囲まれ、 敷地内に計画されている保育園や学童保育施設、周辺の地域との交流を生み出している。 暖かい光が漏れる模型写真が印象的であるが、部屋を家と見立てた街並みの形成と、 周辺の住宅街との調和がよく表現されている。また、介護単位よりも生活単位を小さくする提案、 その交流拠点としてのサブリビングなど、建築計画的なアプローチが意欲的であり、銀賞として評価した。
(文責:菅原 秀見)

工業高校の部
金賞

鈴木結衣君

北海道名寄産業高等学校建築システム科 The regend of maple
ここに復活!!道北の結婚式場兼娯楽複合施設「ザ・レンジェンドオブメープル」

  名寄市民の多くの人々に耳を傾け、街に求められる"親しまれる共有空間"をかつて市民に親しまれ閉鎖したホテルメープルの記憶に重ねた、 地域再生としてのシンボル空間の計画です。フリーハンドのコンセプトシートはプロジェクトのプロセスからテーマ・コンセプト・空間イメージがわかりやすく 展開されていて興味深かった。空間を構成する8角形のユニットは3つのゾーン・5層にダイナミックに構成され、時間の記憶を繋ぎ、 新鮮な空間と風景を街に創り上げた内容は金賞に十分値する。建築を見つめるまっすぐで多様で豊かな視点をこれからも大切にして下さい。
(文責:遠藤 謙一良)

銀賞

榮田民人君

北海道札幌工業高等学校建築科 六花の図書館

  雪をテーマに据え置いた作品は、数多く過去にもあった。北海道に住んでいて建築を目指す若者にとって、当然といえる題材である。 しかし、今回の図書館はいままでとはちょっと違う。3つに文節された棟はそれぞれ広がりや明るさや使いやすさ、そして親和感を兼ね備えている。 しかもその全体像は美しい。一瞬安藤風かなと思ったが、そんなこともなく立面も大人っぽく秀逸である。今後に大きいに期待したい。
(文責:中山 眞琴)

銅賞

松本明人君

北海道旭川工業高等学校建築科 a hive 〜笑顔の繋がり〜

  旭川に建つ商業施設の提案である。 自然と一体となった敷地環境を手掛かりしたデザインに取り組み、自然界に見られるハニカム構造を採用した象徴的形態を持った建築となっている。奇抜な外観はともすると使い難い内部空間を生み出しがちであるが、この作品では柱や梁を効果的に利用することにより商業空間の魅力付けに成功している。また、CGを活用した内部空間の表現など、作品の特徴を効果的にプレゼンテーションした点も評価された。 以上を総合的に考慮して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 寛征)

2014/7/8 作成
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