１． 全国的な大学院教育改革の動き
平成17年に文部科学省・中央教育審議会より「新時代の大学院教育 ―国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて―」が答申された。ここでは大学院教育の明確な目標設定が問われ、これに沿った教育プログラムおよび教育内容の再構築が求められる。大学院教育の実質化では、コースワークの充実・強化、円滑な博士の学位授与の促進、教員の教育・研究指導能力の向上、産業・地域等と連携した人材養成機能の強化などのキーワードが並んでいる。また国際的な通用性として、大学院評価の確立と質の確保、国際社会における貢献と競争などのキーワードがある。これを受けて大学院設置基準等の改正（平成19年4月1日施行）が行われ、平成19年度以降は、研究科・専攻ごとに人材養成に関する目的を学則等に定め、ファカルティ・デベロップメントの実施や成績評価基準の明示が義務づけられた。
２． 大学院教育改革支援プログラムの実施
平成17年度からは文部科学省「魅力ある大学院教育イニシアチブ」という大学院教育支援が実施され、大学院においても競争的環境のもとで教育改革に取り組む姿勢が求められるようになった。応募件数および採択件数はともに国立大学が大きな割合を占め、また採択されたプログラムのうち理工系が約9割という結果となっている。平成19年度からは「大学院教育支援プログラム」も実施されるようになり、平成20年度からは「魅力ある大学院教育イニシアチブ」を廃止しこれに一本化されている。
３． 建築士試験の受験資格要件
耐震偽装に端を発して、国土交通省のもと建築士受験資格要件の見直し（平成21年度入学者から適用）が行われている。ここでは従来の学科認定を取りやめ、指定科目（単位数規定も含む）の履修が学歴要件となるような変更が予定されている。また大学院教育に対する一律の実務認定が取りやめとなり、実務認定（１年もしくは2年）を得るためにはインターンシップなどの実践教育の実施が条件となってくる。さらに、建設業においても実務として認められる職種の制限が強まり、大学のみならず実社会への波紋も広がっている。
４． 国際建築家教育
UNESCO-UIA建築教育憲章では5年以上の建築教育プログラムが望まれており、中国や韓国といったアジア諸国もこれにあわせた教育プログラムの変更をすでに行なっている。これに対し、日本だけが学部＋大学院の４＋２年制度を継続しており、6年間教育プログラムの一貫性も保証できていない。そこで、日本建築学会では大学院JABEE認定を他の学協会に先駆けて実施し、将来的には学部JABEEと連動した6年一貫教育の認定を行っていく予定としている。
５． 結びにかえて
少子高齢化、偽装、国際競争力などの問題に直面し、大学＋大学院教育は否応なしに改革を迫られている。これらを戦後レジュームからの脱却などという美辞でまとめるにはあまりにも重過ぎ、また希望も見出せない。しかし、初等からははじまる「教育」は未来の力につながっていくことに間違いなく、もしそこに惰性があったのであれば教育改革を含めて自らを律していかなければならないと感じる。大学人としてそこに一筋の光を見出したい。