日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!32号
支所だより 〜新潟〜

学生住民協働のまちづくりの実践
長岡栃尾表町の雁木作り


岩佐 明彦
(新潟大学工学部建設学科)




 


  すがすがしい5月の快晴の元,長岡市栃尾表町を見下ろす秋葉公園にいくつもの人の輪ができ,住民と学生が名物の油揚げをおかずにおにぎりを頬張る….春の訪れと共に,今年も表町の雁木づくりがスタートした.

  新潟大学建築学コース3年生による建築計画学演習(担当:西村伸也教授・岩佐明彦准教授)は,長岡市(旧栃尾市)表町の住民と協働し,雁木(各住戸から街路に供された屋根付きの歩行空間)を少しずつ建造していくという「手作り」なまちづくり活動である.実際に雁木を作るようになって9年,西谷川に沿って蛇行するように軒を連ねる町の各所に手作り雁木が見られるようになった.

  一年を通して行われる雁木作りの活動は,「町を知ること」,「提案すること」,「作ること」の3つの段階に分けられる.そしてこの活動の大きな特徴は3つ目の「作ること」にある.夏に行われるデザイン提案のプレゼンテーションと住民による投票を経て,優秀案を地元の工務店の協力を得て実際に建造するのである.
  この「作ること」が最終目標に提示されることが,参加する学生の大きな原動力となっている.

 毎週のように表町を訪れ,様々な住民と関わり,時には一泊お世話になりながら,自分たちのアイデアをまとめていく.最終プレゼン直前の製図室の熱気は,卒業設計提出直前のそれを凌ぐほどである.
「自分の設計したものが実際に建つ」,このことが学生にとってどれだけの魅力を放つものなのか,毎年ながら驚かされる.

  8つのグループに分かれて取り組むこの演習で,最終的に雁木の建造に辿り着けるのは,たった1グループ.実際の建築コンペ並みのハードルが待ち構えている.勝ち抜いて雁木建設の栄光に辿り着くのはどのグループか?栃尾表町の熱い夏が今年も訪れようとしている.