日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!32号
支所だより 〜富山〜

アルミによるミニマルストラクチャー
竹平記念体育館前待合室


貴志 雅樹/横山 天心(富山大学)
南井 英希(三協立山アルミ)
  
写真1 外観     写真2 内観


写真3 外観


写真4 柱と連結棒


写真5 外壁柱と梁


写真6 内壁柱と梁


写真7 カバー装着した状態

この待合室は、新しいアルミ構築物の開発を目的として協立山アルミと行った共同研究の成果である。以下内容をデザインコンセプトとテクノロジカルコンセプトに分けて纏めている。

デザインコンセプト(富山大学 貴志雅樹・横山天心)

1)アルミとガラスによるミニマルデザインの追究

a) 建築の構造としては華奢な60oのアルミの同じ型材を柱や壁、天井や屋根とすることで、空間を最小限の部材で構成する。
b) ガラスとシールとアルミ型材が同一面で納められることで、連続した門型フレームがもたらす精密で平滑な面性を保持する(フラットサーフェイスの追究)。
c) アルミパネルの接合部におけるスチールの受け材やボルト、さらに照明や配線まですべて60oのアルミパネルに埋込むことで、単純で即物的な架構とする。

2)アルミニウム構造物が有する特性の活用

a) 軽量であることから、運搬・組み立て・解体が容易である。
b) 経年変化が少なく、リユースやリサイクルといった再利用が可能である。
c) 構造材と仕上げ材を一体化して使用することが可能である。

3)交通施設内の構築物に対する諸条件への配慮

a) 駅のコンコースやホームなど大きな重機を持ち込むことが困難な場所においても、人力で簡単に建設できる。
b) 移築、改築が短期間で簡易に行うことができる。
c) メンテナンスを容易にする。


テクノロジカルコンセプト(三協立山アルミ 南井英希)

1)アルミによるミニマルストラクチャー
柱材と梁材は共通部材でアルミニウム合金製押出し形材A6N01-T5を用いており、断面は外寸250mm×60mmの長方形である。柱梁の接合部及び柱脚はそれぞれ剛接合,剛支持とし、梁と柱3本からなる平面のラーメンフレームが4体連続し、その間にガラスが納まる構造となる。
  また、構造短辺の柱上部にて、構造部材とは思えないくらい華奢なパイプ材(直径20o)により各ラーメンフレームを連結することで、各ラーメンの短辺方向のたわみを拘束し、天井ガラスの落下を防止している(写真4)。

2)アルミ剛接合の洗煉
接合部は全て接合金物を介し、高力ボルトによる摩擦接合を用いて剛接合としている。柱梁接合部位の断面中空部の一辺を切り欠き、接合金物を挿入しボルト接合する(写真5、6)。柱と梁の断面は構造部と仕上げが一体となっており、ナットをあらかじめ回転止め部材に組み込み、金物に固定しておくことで、ボルトは全て形材のガラス呑み込み面から挿入、締め付けを行うことが可能となる。これにより、ボルト頭、ナットは完全に形材内部に納まることとなる。また、一方向からの施工となり、狭いスペースでのボルト配置となるが、施工性は損なわれない。ボルト締結後、切り欠き面は全てカバー材により覆われるため、施工後は接合部が露出せず、フラットな仕上がりとなる(写真7)。