日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!32号
学生シリーズ

「せんだいデザインリーグ2008への参加を通して」

八代 嘉則
(金沢工業大学大学院建築学専攻 水野一郎研究室)


作品「アートの生まれる町」−1



作品「アートの生まれる町」−2



作品「アートの生まれる町」−3

 卒業設計日本一決定戦「せんだいデザインリーグ2008」が 平成20年3月9日(日)に行われました。「せんだいデザインリーグ」とは、全国から応募された学生の卒業設計を一堂に集め、公開審査によって日本一を決めるというイベントです。この活動は2006年からオフィシャルブックとして全国で発売され、私もこれを見てデザインリーグに応募したいと考えていました。
 私が行った卒業設計は「アートの生まれる町」というタイトルで、金沢の街中にレジデンスとギャラリー、工房といったアートスペースを創出するというものでした。設計概要は、過剰に立てられた閉鎖的な壁に開口の密度と量、そして、連続性といった操作を与えることによって、多様なクリエーションの場と部屋やギャラリーとの関係性を作り上げています。さらに、遮断的な壁に開けられた開口の抜けや連続性を利用して、アート作品越しに別のアートやクリエーションの場を見ることができ、変化と神秘性を加えることによって、現代建築の均一な空間ではなく光と影を取り込んだ普段体験できない空間を体験できるというものです(図1)。初めての学外での審査ということで楽しみにしていましたが、会場にはすごい数の学生がいて、模型も相当の数が並んでいて圧倒されました。模型はどれも大きく迫力があってクオリティーも高く、パネルやポートフォリオもみなしっかりデザインされており、豊かで楽しげなイメージがしっかり伝わってくる作品ばかりでした。結果は24位でファイナルに残ることは出来ませんでしたが、多くの人に自分の作品を見ていただけ、評価してもらえたということが良い経験になりました。ファイナルの10人のプレゼンテーションではみな自分の作品をいきいきと語り、とても自分と同年代であるようには思えないほど上手でした。私は人前に出て話すことが苦手で、プレゼンテーションでもまだまだ作品のエッセンスを人に伝えるといった点で劣っているということを痛感しました。

 あれから数ヶ月経ちますが、ふっとした瞬間に卒業設計のことを思い出し、思いを巡らせることがあります。おそらく、卒業設計で考えたことは、これからの人生でもずっと考えながら生きていくのだろうと思います。それだけ、自分と向き合って、友人たちと対話して建築について深く考えた時間でした。
 卒業設計で最も強く感じたことは人との対話、議論がとても大切であるということです。自分が見えなくなっているもの、気付かなかったことを友人たちの指摘やアドバイスで、気付かされ、よりよい作品にすることができました。また、地方の学生は都市部の学生よりも情報量が少なく、建築家との対話や経験が足りません。しかし、地方だからこそ出来ること、考えられることもあると思います。だからこそ、貪欲に一つのことに食い下がって多くのことを学んでいくということが大切です。それにより、都市に住む人とは一味違うデザインを生み出していかなければならないと考えています。