日本建築学会北陸支部広報誌 Ah32!号
シリーズ「いきいき街づくり」

「歩いて楽しいまちづくり」を目指す社会実験

松林 和彦
(表参道ふれ愛通り実行委員会アドバイザー、有限会社松林都市建築計画)

2008年5月 善光寺花回廊とのタイアップによる社会実験


2007年11月 社会実験の道路形態


2007年11月 パラソルで休憩する様子

  善光寺の表参道に位置する「長野市中央通り」では、道路を地域に開放して沿道と一体的に空間をつくり、まちに来やすい交通形態を考えることで、歩いて楽しいまちづくりを目的とした社会実験が行なわれています。
「表参道ふれ愛通り」と称したこの取り組みは、今年もGW中の5月3日から5日までの3日間実施されました。

●とにかく出来るところからやろう
長野市の中心市街地は、善光寺を中心に門前町として発達してきました。しかしながら、よくある地方都市と同様に、住民や商店が郊外に流れ、空き店舗や駐車場が目立ち、近年では商店街やコミュニティの維持が難しくなり市街地の衰退が進んでいます。
そこで、これまで活性化対策に取り組んできている「中央通り活性化連絡協議会」では、かねてからの計画である「トランジットモール」構想をもう一度考え直そうと、平成15年より長野市とともに勉強会を始め、社会実験に取り組むようになりました。

●回遊性を高める道路空間とは何?
2004年からスタートした表参道ふれ愛通りは、今回で7回目。
今回の主な取り組みは、通過交通を減らすために、最低限バスがすれ違うことができる幅(6m)に車道を狭め、快適に歩いてもらうために、休憩場所の配置やイベントができる仮の歩道を設けました。併せて、アクセスのし易さを考慮し、バス一日乗り放題券の発行・回遊バス(花めぐり号)の運行・駐車場利用の促進などを実施しました。
イベント空間では、花をテーマにしたイベントやオープンカフェが設置されました。歩くとやや距離のある長野駅と善光寺の区間も、沿道を歩く楽しみを提供し、バスと徒歩を併用することで回遊性を高めることができたと考えています。実験期間中は、まちが大変賑わいました。何も実施しない同期間よりも、数倍歩行者が増えたという調査結果も出ています。

●結果は良好、課題は山積み
観光客や買物客からは、概ね良好な評価を得ているものの、まだ商店を中心とした地元からは、厳しい意見を頂いています。あくまでも将来の目標に向けた社会実験ですから、解決しなければならない課題が山積みです。この表参道ふれ愛通りが実現しても、すぐに歩く人が増えてまちが活性化するわけではありません。あくまでも、そのための手段としてスタートしたばかりです。