日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!32号
若手優秀プレゼンテーション賞 受賞にあたって

「原稿を見ずに前を向いて」

馬場麻衣
(福井大学大学院工学研究科ファイバーアメニティ工学専攻博士後期課程)

タイトル:
賃貸住宅経営者組織の活動内容に関する調査研究


  私は、「賃貸住宅経営者組織の活動内容に関する調査研究」と題して、修士論文の一部を発表しました。目的は以下のようなものでした。ライフスタイルの多様化など今後ますます賃貸住宅の役割が重要になっていく中、現状での賃貸住宅は持ち家に比べ、質的水準が大変劣っています。さらに、「賃貸経営者」といえば、その住宅そのものではなく、転売による利益が目的の場合が多く、なかなか新規でも良質な賃貸が供給されないことを危惧していました。そんな中、全国的な賃貸経営者組織に出会い、その会員の経営意向を調査する機会に恵まれました。そうすると、一番の課題は「空室対策」であり、部屋が埋まらないと金銭的に困るという問題はみなさんお持ちでしたが、それを日々の清掃活動や居住者に対する声掛け、おすそ分けなどを行うことによる、ソフト面での安心感を大切にしている経営者が存在しました。その結果、経営状況は良いとのことでした。さらに、経営者組織の活動も「空室対策」のセミナーや講演が多く、次いで「防犯対策」や「借家人とのトラブル対策」でした。

 ここ、北陸は持ち家率が非常に高く、多くの人が“夢のマイホーム”を目標にしていると思います。しかし、これまでの研究の中でも、郊外の新興住宅にある大豪邸に老人が独りで暮らしていて、足も悪く、日々の買い物もままならないというような光景を目にしました。ただ家を持つだけでなく、年次経過とともに自分に似合った生活に変えて行くべきだと強く感じました。このように、たとえば老人が引っ越しても良いと思える賃貸住宅が市街地に増えることを望んでいます。

 この賞に応募していたことも忘れたころに、受賞の知らせが届いたので、大変うれしかったことを覚えています。誰もが人前で話すのは緊張すると思います。これは何度も経験するしかないと思っています。また、限られた時間の中で自分の研究をより理解してもらえるように、私は原稿を作っていません。原稿があると、それにとらわれ抑揚がなくなりそうだからです。パワーポイントを準備しながら、そのページで伝えたいことをぶつぶつ独り言で言っています。そうすると、当日の流れで、機転を利かせ、長くなりすぎたときのまとめもスムーズにいくと思います。あとは、人の目を見て堂々と!とはいうものの、今までに完璧にできたことはありません。まだまだ経験が必要です。