日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!32号
支部活動報告 北陸建築文化賞 受賞にあたって

受賞(業績) : 金沢ライトアッププロジェクト月見光路
受賞者 : 広坂振興会/金沢中心商店街まちづくり協議会/金沢工業大学月見光路プロジェクトチーム

「金沢ライトアッププロジェクト 月見光路」

文 : 西村 督(金沢工業大学環境・建築学部建築系)










 本プロジェクト「月見光路」は、広坂地区という金沢中心市街地において、@北陸の文化や景観と調和した夜間景観演出法を提示し、A新しい催事というかたちでの地域連携や市民参加を実現化させ、持続可能な地域活性化を目指したプロジェクトです。

  本プロジェクトの実施地である広坂地区は、香林坊から兼六園をつなぐ百万石通りの南北方向に面したエリアです。このエリア内には、旧制四高跡である石川近代文学館、石川旧県庁本庁舎、金沢城址、辰巳用水、金沢市役所、金沢21世紀美術館があり、広坂地区は金沢の伝統文化、政治経済、芸術の拠点といえる希少な文化地区です。
  一方2004年の石川県庁舎の移転を機に、地域住民が中心市街地に訪れる機会が数年々減少し、広坂地区の商店街では、夜間になると店を閉める店舗が多くなり、近隣の兼六園や金沢21世紀美術館の個性的な演出と賑わいとは相反する流れにあるという問題がありました。2004年度には、金沢市中心市街地活性化基本計画が策定され、基本方針には個性を生かしたまちづくり、元気な商店街に加えて都心ビジネスの形成もあげられています。

  「月見光路」とは広坂振興会、金沢工業大学プロジェクトチーム(教職員7名、学生約120名)、金沢中心商店街まちづくり協議会が主催となって、広坂地区の夜間景観の創出と中心市街地の活性化を目的とした地域連携型プロジェクトです。

  プロジェクトの実施にあたって、金沢工大教職員および学生が広坂地区住民とディスカッションをして、地域の環境変化、ニーズ、将来像の理解に努め、広坂地区独自の夜間景観を立案しました。
  デザインコンセプトは、月や星といった自然のあかりに惹かれて、訪れた人が広坂地区をそぞろ歩きできる“あかりのみち”であり、金沢の伝統文化にふさわしい庭、草木、山、星、雪吊り、竹をイメージした照明オブジェを作成しています。金沢中央公園から広坂緑地公園、金沢21世紀美術館までの動線と広坂商店街にオブジェを2000基以上配置し、金沢城址や美術館とも調和した夜景観を創出させています(写真1〜4)。

  開催時期は2006年7月29日(金澤夕暮れ祭りに月見光路プレイベントとして参画 写真5〜6)と同年10月12〜14日です。またプロジェクト後、店舗内照明を3種類デザインし、商店街のウィンドウディスプレイに協力する機会を得るなど、プロジェクトの波及効果も直実に現れています。月見光路は2004年〜2007年まで継続して実施しています。2007年度には2006年度の実績を踏まえて、「月見宴」と題し、あかりに関するディスカッション、野外コンサートの催しと、オープンカフェを盛り込み、市民参加と集客効果を高める工夫がなされ、年々プロジェクトを成熟化させています。このことは、2006年度までの地域連携や実施体制がより確立したこと、一般市民の期待がより高まったことを意味しています。

  今後も金沢独自の景観演出、持続発展する地域連携の取り組みを提案し、文化都市金沢の発展に寄与できるように努めていこうと考えています。