日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!33号
支所だより 〜福井〜

緑と季節感のあるまちづくり

佐々木 教幸
((有)庭研ふくい)


写真1 越前東郷今村家見学


写真2 福井切妻の家


写真3 あさがおのカーテン


写真4 吉田家坪庭


写真5 小布施のまちづくり

(1)はじめに
 私は、寺院の住職と、30年余り造園の仕事に従事しています。また毎月1回、 各地の庭園や建築、旧街道などを訪れる見学会を行っています。(写真1)
  多くの事例を見て、緑の重要性と、それを活かしたまちづくりの大切さを感じ ましたので例を挙げて書いてみたいと思います。

(2)まちの現状
 今、緑が消えています。庭は世代が変わって駐車場や増築のために縮小されたりなくなったりしています。まちのシンボルツリーになるような大木も、老化や病虫害で切られたりしています。
 建築物は、阪神大震災後、大手住宅メーカーを中心とした四角い建物が、どの地方でも増えています。 城下町や街道でも増え、農村では、デザイン性のある福井の伝統的な切妻の家が消えようとしています。(写真2)
 まちの季節感も乏しく、福井でも、桜並木は有名ですが、夏から冬にかけて季節を感ずるものは少ないように思います。

(3)緑の効用
 緑には多くの効用がありますが主なものとして3点挙げます。

1.緑陰による体感温度の低下と、光合成による酸素の供出、これは今日、屋上緑化や壁面緑化で注目されています。

2.落葉樹の紅葉や、花の咲く草木は季節感を創出し、癒しの空間をつくってく れます。古川町内で見たアサガオはまちの空間を和らげていました。(写真3)

3.日本文化の代表的表現である茶庭、坪庭などにとっても重要な素材です。徳 島県の脇町・吉田家の坪庭で見たシダなどの下草はすばらしい空間を作って いました。(写真4)

(4)緑の効用とまちづくり
 緑は、坪庭や露地庭のように住宅内で使われて、季節感や美的空間を作り出す ものと、地域全体で環境的にも良い緑陰、壁面緑化で景観を作り上げるものが あります。愛知県の足助町のようにモミジでまち全体がおおわれ、季節感を出し、 地域経済にも寄与するなど、まちづくりに欠かすことのできないプラス効果があ ります。福井でも、個人住宅やまち全体で緑の効用を活かしたまちづくりをすす めたいと、現在、身近な所から計画中です。(写真5)