日本建築学会北陸支部広報誌 Ah33!号
シリーズ「いきいき街づくり」

ニューカッスルのアートによる都市の再生

赤井 文
(新潟大学大学院自然科学研究科環境共生科学専攻 岩佐研究室 修士1年)


写真1 ミレニアム・ブリッジとBALTIC


写真2 Grass on Vacation


写真3 Baby PlaneとCloud Camera


写真4 ピクニックコンテスト


写真5 BALTICからMother Planeとタイン川を望む

  この夏、ニューカッスルで行われた『ピクノポリス』に参加してきました。

  ニューカッスルはイングランド北部にある人口40万ほどの小さな街で、川幅が約1/4マイルのタイン川を隔てて、ゲイツヘッドと双子都市を形成しています。他のイギリスの都市と同様、工業の急激な衰退により錆びれた街になっていましたが、この10年ほどで芸術・文化を軸とした都市の再生が行われています。

 タイン川には産業技術を駆使した6つの橋があり、ゲイツヘッド側にはコンサートホール<Sage>と製粉工場の貯蔵庫をリノベーションした芸術文化センター<BALTIC>が、ニューカッスル側にはタイン川に面したテナントの再開発が行われ、その施設群を結ぶように新たに歩道橋の<ミレニアム・ブリッジ>が架けられました。

 これらの芸術・文化施設を中心に毎年アートプロジェクトが行われ、今年は日本から東京ピクニッククラブが『PICNIC RIGHT』を掲げワークショップを行いました。芝生とくつろげる場所があり、簡単な料理を各々が持ち寄ることでピクニックをすることができます。ピクニックに訪れた人々に、日常では気付かない都市の魅力を再発見してもらい、公共空間のあり方そのものについて考えてもらうことを目的として行われました。

 開催中は「Mother Plane」が<BALTIC>前に設置され、「Baby Plane」がニューカッスルとゲイツヘッドの色々な場所を毎日移動してピクニックが展開されました。「Mother Plane」と「Baby Plane」ともに大盛況。多少の雨が降っても、訪れた人々が「Baby Plane」を使って思い思いに過ごす姿は、まさにアートであり、スーラの「グランジャット島の休日」を思い出す光景でした。

 ヨーロッパでは屋外で何かを行う文化が根付いています。日本でもアートを通じたまちづくりや公共空間の提供は、多く見られるようになってきました。しかし、立ち入り禁止の芝生でピクニックができなかったり、高層ピルを建てるために極小の公開空地を設けるというような、公共空間の提供の仕方に問題があように感じます。その中で『PICNIC RIGHT』を唱う東京ピクニッククラブの活動は、これからの日本における公共空間のあり方そのものに影響を与える活動なのではないでしょうか。

詳細は東京ピクニッククラブwebサイト(http://www.picnicclub.org/)をご参照ください。