日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!34号 後藤 正美 (金沢工業大学 環境・建築学部 建築学科 教授) |
近年多発している地震では、大きな被害が発生している。建物の構造的な被害の低減は重要な問題であるが、過疎・高齢化の進む地域では、被災後の復興も重要な課題である。 本報では、被災直後と地震発生から半年後に実施した悉皆調査の結果を紹介する。被災直後の悉皆調査は、輪島市輪島、輪島市門前、穴水町を対象に日本建築学会が実施したものであり、半年後の調査は、輪島市門前を対象に金沢工大単独で調査したものである。 門前町は最も被害の大きかった地域であり、地震直後の調査では多くの木造住宅が被災し、倒壊に至る建物もあった。被害を受けた木造住宅の多くは、古いもので構造的に配慮がかけるもの、あるいは維持管理が十分でなく部材の腐朽や蟻害が認められる建物であったと推測できる。新しい住宅や古い住宅であっても構造のしっかりした建物の被害は小さかったと言える。半年後の状況としては、地震によって倒壊や大きな被害に至った建物は取り壊され、更地になっていることが多かった。建て直された住宅もみられた。 半年後の調査では、担当地域をそれぞれのチームに割り当て、現在の建物の状況を地図で確かめながら記録していった。状況の判別の仕方は、外観目視による判断で、震災直後より半年後の建物状況が、解体(更地)、建替え、修繕、放置、変化なしの5種類のどれにあてはまるかで判断した。判断した住宅を写真撮影し、調査シートに判断した状況を記入した。 地震発生直後と半年後の建物の状況の比較を写真1〜3 (a)(b) に示す。半年後では、修理や建て替えが進んでいるが、解体撤去されたままのものが未だ多い状況であったといえる。 被災後の復興は、経済性、家族構成など様々な要因が関係しており難しい問題である。 |
⇒ 写真1 (a) 写真1 (b) ⇒ 写真2 (a) 写真2 (b) ⇒ 写真3 (a) 写真3 (b) |