日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!34号

「親と子の都市と建築講座(新潟)」の報告


五十嵐 由利子 
(新潟大学教育学部 教授/親と子の建築講座実行委員会 実行委員長 )



図1 かまくらづくり(その1)


図2 かまくらづくり(その2)


図3 かまくらづくり(その3)


図4 ゆれの秘密


図5 地震に強い家のしくみ

  2008 年から「親と子の都市と建築講座」と名称が少し変わりましたが、平成4年度から「親と子の建築講座」を年3回実施してきました。当初から有志による実行委員会を作り企画運営を行っていること、新潟県建築士会との共催で実施していることが特徴です。また、3回の講座のうち、1回は 新潟市 内で、他の2回は他の地域での実施を基本に企画しています。
  2008 年は、講座1「魔法の板を積んでかまくらを作ろう」( 10/5 )、講座2「強い形・弱い形」 (11/22) 、講座3「地震に強い家のしくみ」 (11/30) でした。各講座の実施内容は以下の通りです。

 講座1では、冨安智子先生(アトリエカプラ代表)を講師にお迎えし、魔法の板と呼ばれる小さな木片「カプラ」を積み重ねて、人が数人は入れる大きさのかまくらをグループに分かれて作りました。かまくらを作る前に、短時間でどれくらいの高さまで積めるかの競争をし、カプラの感触をつかみました。人が入れる大きさとかまくらの形になるまで、最初はかなり緊張しながら、そして、みんなで協力してカプラを積んでいきました。完成したかまくらは存在感があり、見ごたえのある出来栄えでした。そして、 かまくらとかまくらをつなぐ道をカプラで作ったり、道の両脇に小さな造形物を作ったりと、子どもも大人も創造力を働かせながらまちづくりまで楽しみました。( 図1、図2、図3参照)
  なお、この講座1は新潟県立自然科学館で開催しましたが、毎年1講座は、自然科学館の協力を得て実施しています。

  講座2「強い形・弱い形」は、柏崎市教育委員会と新潟工科大学などが主催し、新潟工科大学で毎年実施している「青少年のための科学の祭典」と同時開催で行われました。科学の祭典には 17 のブースがあり、本講座は、「強い形・弱い形」と「ゆれの秘密」の二つのブースでした。「強い形・弱い形」では、画用紙でいろいろな形の柱を作り、どれだけたくさんの本が載るかの実験ですが、子どもたちは本を1冊ずつ恐る恐る載せていました。「ゆれの秘密」では、建物の模型にテープで筋交いを入れて揺らし、テープカット後(筋交いがないとき)の揺れと比較した実験(図4参照)などが行われました。参加者は、講師の穂積秀雄先生(新潟工科大学教授)と研究室のスタッフとともに実験をしながら強い形、揺れの秘密を体感していました。

  講座3は、後藤哲男先生(長岡造形大学教授)が講師となって長岡造形大学で開催しました。
 平たい大きな木製の箱を開くと、蓋の内側に 1/10 の尺度で桁行四間・梁間三間の建築物の土台が現われました。箱本体には柱や梁など百を超える部材が整然と納められており、各々の部材には組み立てに必要な加工が施されていました。二人で一組になり、日本の伝統的な木造建築の構造模型を組み立てました(図5参照)。この組立作業は小さな大工さんの棟上げ作業といった状況でした。そして、完成した模型に力を加えて、筋かいや壁の配置によって建築物がどのような変形をするのか等を解説していただき、地震に強い家のしくみを学びました。

 また、 2008 年度は、新潟大学のダブルホームの学生(学部横断の1年生のグループ)が講座1と講座3に参加してくれました。実行委員との交流、講座への参加を通して地域との連携などを学ぶ機会を学生たちに提供できました。
 毎回、講座に参加する子どもたちを見ていて感じることですが、「自らの手を動かして形のあるものを作っていく過程の生き生きした目、大人がとても太刀打ちできない想像力・創造力」を大切に育んでいくお手伝いができたらと思っています。