日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!34号

建築文化週間

「こどもたてもの探偵団」にみんな集まれ!



堀江 秀夫 (富山大学 芸術文化学部 教授)


図1 配布チラシ


図2 発表スライド作り風景


図3 発表風景


図4 発表をきく会場の小学生


図5 探偵団賞をもらって喜ぶ小学生

 子どもの頃から建物や街並みへの関心を深めることを目的に、富山支所が中心となって、小学生を対象とした街並み探検のワークショップである「第4回 こどもたてもの探偵団にみんな集まれ!」を、去る2008年10月11日(土)に富山県高岡駅前のウイングウイング高岡を拠点として開催しました。毎年天気が気になるワークショップで、今年も雨が降らずほっとしました。

  いつもの見慣れている建物をデジカメで切り取って持ち帰り、「反対の感じのする一組のたてもの」を「対になる言葉」とともに発表する内容で、総勢7チーム32人の地元の小学生が参加しました。子どもたちは「たてもの探し」のため、9時30分に高岡駅前から郊外に向かう路面電車「万葉線」に乗って元気に出発。各チームには、安全確保と写真撮影補助のため、学会員と学生アルバイトが付き添っています。子どもたちは、「たてもの」がありそうな場所を地図で探しては近くの停車場で降り、青空の下、高岡の街並みを観察しながらパチパチ写真に撮り、また「万葉線」に乗って次の探検場所へ移動を繰り返しました。中には、万葉線終点からさらに渡し船に乗って、海上の船からたてもの探しをしたチームもありました。

 昼にはウイングウイング高岡に再集合し、昼食を取りながら、子どもたちは学生アルバイトと協力して持ち帰った建物や街並みの写真をワイワイ、ガヤガヤ、時には喧嘩しながら、一人ひとりが「反対の感じのする一組のたてもの」を「対になる言葉」とともにまとめたパワーポイントのスライド作りを行いました。会場は32人の小学生の熱気と喧騒でむせかえるほどでした。また、まだ幼い小学4年生は探検中に喧嘩をして帰ってきたため、スライド作りのために学会員が仲直りをさせるのに苦労した場面もありました。

 全チームの作業が終わった時点で、チームごとにスライドをスクリーンに写しながら、緊張した面持ちで、一人ひとりが「たてもの」の説明と感想を発表しました。学会員は審査委員となって「みんなで楽しく、誰もが気づかなかった独創的な感性でたてものを発見したチームはどこか」という視点から発表をしっかり聞き、そして時間をかけて討議した上で優秀発表を選考しました。この優秀発表のチームには、功績を称える探偵団賞を授与して午後4時にワークショップを終了しました。

 このワークショップは今回で4回目となり、昨年に続いてリピーターも参加してくれ、地域の子供たち向け建築文化週間行事として定着できたと満足しています。一方、開催初回のときに小学校にチラシ配布のお願いに行き、教頭先生から「小学校4年生はまだ子供なので5・6年生を対象にした方がよい」といわれた言葉の意味が今回よくわかりました。喧嘩をした4年生をなだめるのに大変でしたので。

 今後の展開として、地域の子供たち向け建築文化週間行事のさらに拡大策を目指して、開催場所を県西部の高岡市から東部の富山市に移し、富山市にある路面電車「ライトレール」沿線の小学生向けを企画しようという案も出ています。