日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!34号
学生シリーズ(石川)

KIT発 広坂ウィンドウディスプレイ

石月 亜希子
(金沢工業大学 環境・建築学部 建築学科2年)


完成したウィンドウディスプレイ


作業風景


モックアップ(様々な感情)


モックアップ完成を終えて


設置風景

 私たちが今回行ったウィンドウディスプレイ(WD)プロジェクトは、金沢工業大学の月見光路プロジェクトの一環です。月見光路とは、金沢の主要中心部である香林坊周辺の広阪緑地や21世紀美術館において毎年実施している建築系学生による光の祭典です。

 そもそもこのWDプロジェクトは、月見光路を広げていくために、そして、下級生の育成のために、月見光路でもお世話になっている広坂振興会幹事の和田さんが経営される文房具店(大気堂)のショーウィンドウをお借りして3年前から行っているものです。今年は、約2か月間に1〜3年生それぞれのグループが製作した作品を一作品ずつ飾っています。

  私たち2年生のチームはトップバッターでした。全体会議で決まった「ジェネレーションZ」という3学年合同のメインテーマをもとに自分たちのテーマを決めていくことからのスタートでした。私たちのテーマは「感情」。日々めまぐるしく、変わっていく日常の中で、様々な思いを抱えながら生きている人間の感情をディスプレイで表すことにしました。人は日々笑ったり怒ったり悲しんだりしますが、それらは表に現れることなく、心の奥に潜めていることもあります。そんな風に、ジェネレーションZを自分達なりに解釈し、デザインを検討していくことになりました。

 最初は、各々でアイディアを持ち寄り、意見交換をし、試行錯誤の連続でした。時には、意見の衝突もありましたが、お互いを尊重し合い、ようやく意見がまとまったのは、設置日の二週前でした。その後は、モックアップや照明実験など毎日明け方まで総勢13人で行いました。

 私たちは建築系の学生として単に見た目の美しさではなく、形や色に意味があって、見る人に「感情」というメッセージが伝わるような作品を完成できたと思います。また、作品は小さなものですが実際に設計者(私達)として、設計・施工のプロセスを学生のうちに経験できたことは貴重な体験でした。自分たちの考えを貫き通すのでなく、相手に伝わるようにひとつひとつ言葉を選びながらみんなで相談し合いました。また、意識のある仲間たちと納得いくまで話し合えたこと、そんな仲間がたくさんできたことは、私にとって価値のある時間となりました。私達のために場所を提供してくれた広坂振興会の和田さん、協力してくださった先生方や先輩方を始め、企画調整をしてくれた職員の方々に対してこの場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。

 このプロジェクトの発展形として、広坂に期間限定のデザインショップを出す計画もあるそうです。また、このWDプロジェクトの初代チームである3年生が今年の作品で一区切りをつけます。先輩方が作ってくれたこの価値あるプロジェクトの今後の継続と発展を願って、これからも邁進していけるように努力していきたいと思います。