日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!34号
学生シリーズ(新潟)

自分自身で味わうこと

岩渕 直子
(長岡造形大学 造形学部 環境デザイン学科3年 澤田研究室)


まちに飾ったのぼり


ナイトウォークプロジェクト


デザイン案の検討


ちょうちんづくりのワークショップ


観光協会の方々との制作作業

 私は新潟県にある弥彦村観光協会の方々と一緒に弥彦の景観を見直してみようといった主旨のまちづくりプロジェクトに参加しています。

  ここは弥彦神社や温泉などがある観光地です。この他にも弥彦公園や史跡などのまちを歩き回ることで見えてくる様々な観光資源があります。しかし最近では車や観光バスで弥彦神社へ直接行き周辺の土産屋へ寄って帰ったり、ホテルの中で全てが完結するといった観光の形が主流になってきています。そこで、もっといろいろな弥彦を見てもらうために今ある景観を見直し、活用方法を考え活性化を図るため、2005年からこのプロジェクトは始まりました。

  プロジェクトは通りにのぼりを立てる「のぼりプロジェクト」から始まり、去年は夜の弥彦の温泉街の風景を生み出すためにペットボトルを再利用したちょうちんを持って史跡などを巡る「ナイトウォークプロジェクト」や、昼間の弥彦を歩き回ってもらうことを目的とし、史跡や通りなどに看板を立てたチェックポイントを、そのために作成したマップを持って巡りクイズを解いていくという「ウォークラリープロジェクト」を行いました。

  温泉饅頭の食べ比べをしたり史跡のひとつの木の大きさに感激したりと、実感しながら現地調査を毎年何度か行い、それを基にプロジェクトの提案やのぼり、ちょうちん、マップ、看板などのデザイン案を考えていきます。そしてその案を観光協会を中心としたまちの方々へプレゼンテーションをし検討を重ね決めていきます。実際の制作もワークショップを開くなどをし、まちの方々と一緒に作っていきます。

  私の大学にはこういった外に出て地域の人と協力し自分たちの提案を実際に形にできるような活動が比較的沢山あるのではないかと思います。いくつかある活動の中で、このプロジェクトに参加することにしたのは、友達がこのプロジェクトに参加していたからです。

 とても単純な動機から始めましたが、このプロジェクトを通して、人の反応や、その人自身を見ること、提案を考えていくことは自分自身や地域、外のことに眼を向けるきっかけになったと思います。

  まちの方々は反応がとても率直です。面白くない提案やプレゼンテーションは、学生のプレゼンテーションを聞き慣れた先生や学生たちとの反応のよりも、自分の姿が客観的によく見えるようでした。また、私にその日にあったお客さんとのエピソードや、弥彦の多くの歴史を楽しそうに話して下さる観光協会の方々の姿からは、自分の感情を素直に出せることの素敵さを感じました。そしてやはり、自分たちで考えたことでお客さんが喜んでくれる姿は、とても嬉しいことでした。

  授業との兼ね合いなどで、こうしたプロジェクトを負担に感じることも沢山ありましたが、課題に取り組んでいるときも、友達や周りの人たちと話しているときも、就職活動を始めた今も、私の中にこれまで見てきたことがしっかりとあることを感じます。

  お互いにわくわくできる関係でいることはとても難しいことだということも感じました。時間に追われてしまい、こなしていくことが目的のようになってしまうこともありましたし、問題をどう解決していいのかわからないときもあります。しかしそういったことも含め、自分の提案に対して何かしらの反応があることや、日々引っかかったり疑問に思えることは、とても素敵なことだと思います。こうしたことが味わえる環境にいれることはとてもありがたいと思います。私はこの環境にもっと浸っていこうと思っています。沢山味わい、素敵な人になりたいです。そして、そうしていくことがまちの人たちや、観光客にとっての更なるまちの魅力につながっていけばうれしいです。