日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!35号
支所だより 〜石川〜

アルミハウスプロジェクト

宮下 智裕
(金沢工業大学環境・建築学部建築学科 准教授)



図1 アルミハウス省CO2概念図


図2 アルミリングモックアップ
構造体と照明の一体化


図3 アルミリングシステム


図4 アルミニウム構造現場


  アルミハウスプロジェクトでは、産学官連携の実践的な試みとして「北陸の主要産業の一つであるアルミという素材の有利点を活かす」ことを主軸に、施工、運用・維持管理、再生・再使用といったライフサイクルにおいてトータルな省CO2環境共生型住宅の開発を目的としています。
  2005年に発足した産・官・学協同のプロジェクトは現在、金沢工業大学宮下智裕研究室、アトリエ・天工人、山下保博を中心とし、現在20社の企業協力を得て進められており、関東で2棟の住宅を竣工、そして、金沢市内に建設中のアルミハウスでは、これまでの開発を集約したものとなり、国土交通省平成20年度(第1回)住宅・建築物省CO2推進モデル事業として採択されています。
  アルミハウスでは、住宅の構造体として、一つのアルミ基本型材によって柱、壁、梁、スラブを構成する変形のデッキプレート型を用います。このアルミ型材を4面リング状に組み上げたものをアルミハウスの基本構造とし、ジョイントは一般の大工や工務店でも施工が可能なようにL型プレートを組み込む形状での簡素化を図っています。これにより、現場での施工性を向上すると共にリユース性の向上をもたらす事が狙いです。
  また、今回の開発の最も大きな特徴は、このアルミ構造自体が冷暖房のシステムを担っている点であると言えます。構造体をアルミ特有の高い熱伝導率を生かした“輻射冷暖房装置”に置換することによりエネルギーシステムの効率化を図り、冷暖房おける省エネルギーに大きく貢献する事が可能となります。この効果については、竣工後も金沢工業大学・永野研究室と共に検証を行っていきます。この構造体にユニットバス・キッチンといった機能を付加した複合利能体ユニットとしても成立させています。
  さらに、変形のデッキプレート型の構造体の内部スペースを使ってLEDを用いた照明を埋め込むことで、構造体と照明とを一体で計画しています。全ての照明をLEDとし、アルミの反射を用いながら効率的かつ魅力的な生活シーンに合わせた分散型の配灯計画を行う事で、従来に比べ大幅な省エネルギーが可能となると考えています。
  使用するエネルギーには積極的に自然エネルギーの活用を試みている事も大きな特徴と言えます。地中熱エネルギーの活用及びソーラーパネルを始めとした現在普及しているシステムの組み直しを図り、パッケージ化することで汎用性の高い“自然エネルギー活用ユニット”を開発しました。このエネルギー活用システムを輻射式冷暖房システムの熱源に用いると共に、エコキュートの利用やオール電化も行い、設備の総合的な省エネルギー化を促進することがその狙いです。