日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!35号
学生シリーズ(福井)

私の景観研究の始まり

長田 亜美
(福井工業高等専門学校 環境都市工学科5年 江本研究室)


写真1 福井駅前の街路


写真2 街路空間の調査

 私は、福井工業高等専門学校(以下、福井高専)環境都市工学科で学生生活を送ってきて、今年で5年目になります。

  福井高専環境都市工学科では、人々が安全・安心・快適に暮らせる「環境都市」づくりを理念として、土木工学の基礎を習得し、防災や情報処理に関する知識、環境問題に対する知識を身につけた、技術者の育成を目指しています。平成19年度入学生からは、建築系科目を含めた総合的な建設技術者を目指した新カリキュラム体制となりました。卒業後、カリキュラムの中で指定された科目の単位を取得すると、本学科卒業後4 年間の実務経験で、一級建築士、二級建築士が受験できるようになりました。

  現在まで、土木分野の様々な専門教科を学んできましたが、その中で特に、都市計画について興味を持ちました。私が入学当時には建築系はまだ導入されておらず、建築を専門とする先生が来られたのは私が4年生の時でした。そして4年生の秋頃に、建築でも都市計画がされていることを知りました。私が、学んできた土木の都市計画は、安全面や公共面を考えた都市計画ですが、建築の都市計画は景観やデザイン面も考えた都市計画だということを知り、とても興味を持ちました。そして、建築のカリキュラムが導入されていない私たちも、5年生の卒業研究で、建築を学べる機会があると知り、研究に取り組みたいと思いました。

  また現在、卒業研究で、福井県を対象とした中心市街地活性化に関わる街路空間の安全性と景観に関する調査を行っています。地方都市の中心市街地は、衰退化が進んでいますが、中心市街地に集積する都市基盤機能を充実させ再構築することで活性化につながると考えられます。そこで、研究では、福井県の中心市街地の街路空間を対象に安全性、景観の両面から、総合的な観点で現状の街路空間特性を把握・評価し、影響を与えている要因や箇所を明らかにすると共に、各街路の整備の特徴や改善の提案を行うことを目的としています。

  現段階では、県内の福井市、大野市の中心市街地を選定し、現地調査を行っています。いずれも駅周辺を中心に活性化や景観に配慮して整備が行われた街路を対象として、福井駅前、越前大野駅周辺を選定しています。普段、何気なく利用している街路空間を隅々まで調査することで、様々な実態が分かると同時に、とても楽しく調査を行えました。

  今後の計画としては、実態調査の結果をもとに、バリアフリーを中心とした安全性と景観に関するアンケート内容を作成し、選定した街路で様々な歩行者特性をもつ被験者による歩行実験を行い、その評価を分析して各街路の改善等の提案を行う予定です。

  私は、来年から本校の専攻科に進学します。高専の専攻科ではさらに2年間、研究を続けることができるため、今年を含めて3年間で建築に関する知識を高めつつ、景観に関する研究を進めたいと考えています。