日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!35号
学生シリーズ(新潟)

設計コンペを通じて

斎藤 淳之
(新潟大学大学院自然科学研究科環境共生科学専攻修士1年 建築計画研究室)


図1 転用イメージ
<カフェ+バスケットコート>



図2 転用イメージ<図書館>


図3 雪活用の方法

 大学院での生活はあっという間に過ぎてしまいます。そんな短い時間を有意義に過ごすために、私はいくつかの目標を立てました。その一つが設計コンペに応募することです。

 去る7月、私は日本建築学会設計競技「アーバン・フィジックスの構想」に応募しました。このコンペでは計画対象の所在地を所轄する支部に応募します。各支部で支部審査が行われ、そこでの入選作品が全国審査の対象となります。全国審査では1次審査で入選作品が決定し、2次審査ではプレゼンテーションが行われ、各賞が決定されます。

  提案は、ガソリンスタンド(GS)のコンバージョン計画です。近年、日本のGSは減少傾向にあります。GSはその構造上、転用に多大な費用がかかるため、その跡地利用は進まず、放置されている現状があります。私は、GS跡地がその地域の余白となっていると考えました。そこで、GSの持つ空間的特性である<半屋外空間や地下貯蔵タンク>と日本海沿岸地域の気候特性<冬の降雪量の多さ>をあわせ、GSを<雪室をもった公共空間>として転用するということを提案しました。敷地は新潟から青森までを結ぶ国道7号線(R7)としました。この地域は高速道路が開通しておらず、自動車での移動が一般的な地域で、R7は重要な幹線道路といえます。都市→郊外→農村と様々な特性を持った場所を通るR7で、それぞれの地域に見合った小さな空間を作り上げます。GSは自動車とドライバーのものから地域住民のものへと変化すると考えています。

  結果は支部入選で、残念ながら全国1次審査を通過することはできませんでした。アーバン・フィジックスという耳慣れない言葉に戸惑うこともありました。しかし、自らにとって身近なテーマに取り組むことができ、非常に充実した時間を過ごせたと考えています。

  こうしたコンペの魅力は学外の方に評価していただけることだと思います。応募している方も、様々な大学・地域の学生、社会人、さらには海外在住の方もいます。さらに、コンペは大学の製図課題とは一味違うテーマが与えられます。その解釈の仕方や敷地の設定などにより、作品はまったく違うものになります。様々な視点で物事を捉えるということの重要性を学ぶことができたと思います。また、自分の提出したコンペでは、たとえ入賞できなかったとしても、入賞作品をみて受ける刺激が大きいと思います。今後、公開審査会などへも積極的に参加したいと考えています。また、パネルで自分の考えを表現することは難しく、表現方法の技術向上にもつながったと思います。

  日本建築学会設計競以外にもいくつかのコンペに応募をしました。入賞することはまだ少ないですが、出し続けることで学ぶことも多くあります。地方の学生は、都市部の学生と比較して建築に関する情報量が少ないと思います。そういった状況下でも、コンペに取り組むことは情報を得て、視点を広げる一つの方法だと思います。また、その地方の特色を活かした提案を考えることは、地方に住む学生の大きな強みではないでしょうか。

  今年に入り、コンペやワークショップ、学会発表、インターンシップなど学外での活動に多く参加し、大学内ではできない様々な経験ができていると思います。このようなことに今後も積極的に参加し、自分の視点を広げていきたいと思っています。