日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!36号

建築文化週間2009 開催報告 〜富山支所〜

「北陸の建築文化と宮大工」



富樫 豊 (富山建築・デザイン専門学校建築学科教務部長)


写真1 会場の様子@


写真2 会場の様子A

 文化週間事業の講演会は10月31日(土)13:30-16:00、富山県民会館701号室にて、60名の参加者で盛況のうちに終えた。以下に、概要を報告する。

●テーマ
「北陸の建築文化と宮大工」

●主旨
北陸地域では中世以降は真宗王国として社寺建築が盛んであり、優れた建築技術者いわゆる宮大工が多く輩出した。ここで、宮大工に焦点を当て北陸3県における宮大工の実態や建築について考えてみることにした。

●講演(三部構成)
(1) 講演1:「若狭美浜出身の木子棟斎と木子家について」吉田純一(福井工大教授)
        幕末から現代までの建築については、木子一門の役割が大きいとして、創始者
         木子棟斎の人物像・建築観を紹介し、彼以降の技術継承について鋭く分析し
         解説した。
(2) 講演2:「石川の近代寺社建築に携わった宮大工」田中徳英(石川県文化財保護指導員)
        加賀の名工と建築について語った。なお、名工は、岩城庄之丈、松井角平、
         中川政乗、 柴田真次、天日仁太郎、真柄要助、の6氏である。
(3) 講演3:「技術・心得の伝承について」酒井仁義(酒井匠四代目棟梁)
         生い立ちを語った。そのなかで職人は、技だけではなく、心が大事であり、その意味で
         心技体と一帯になって初めて、大工職人であるといえると強調した。

●ほか
討議では、宮大工の人なり・建築観なりに関心のある方が多く、宮大工の起源や、寺院建築の住職と宮大工の関係について質問が集中していた。