日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!36号
学生シリーズ(石川)

インサーの活動 〜笑顔が見たくて

山本 義人
(金沢工業大学 環境・建築学部 建築学科3年)


図1 先生の研究室の家具制作風景


図2 家具設置


図3 制作した諸々の家具


図4 インサーのメンバーと先生


 私に建築士を目指す夢を与えてくれたものは、朝日放送さんの「大改造!!劇的ビフォーアフター」です。内容は様々な問題を抱えた家が、一流の建築士である「匠」たちの見事なリフォーム術によって劇的に大変身するという番組です。敷地条件や家族構成、実状を考慮し毎回見事なリフォームで見るものを楽しませてくれますが、それ以上に喜びや笑顔、感動し、感謝を述べる家族の顔をみていると毎回ながら感極まるものがあります。建築設計では敷地条件やその周囲の環境を読むことは必須条件ですが、家族の想い(顧客の要望)に沿って温かな提案を積極的に取り入れることは、住宅だけにとどまらず、建築の根底に存在している最も基本的なことであり、大切なことだと思います。「建築やその周りのことを考えて何ができるか」私は考えてみた。

  その考えをカタチにするべく私はインサーの活動を開始しました。インサーとはインテリアデザインサークルのことで、活動内容は家具作りを中心にインテリアに関する様々なことを実践的に学んでいくというものです。インサーを設立して早1年半。本格的な最初の活動は、指導教員を顧客に見立て、指導教員の研究室の家具作りを行ったことでした。その後、サークルの活動を知った他の先生から、普段活動している建物内のラウンジのテーブルをデザインしてみては?と声をかけていただき、設計製作を行っています。さらに、インサーの活動を耳にした体育の先生から、自宅の家具デザイン・制作を頼まれました。しかし、その話を進めているうちに、話題はいつの間にかその先生のお子さんが通っている学童保育の話に移っていきました。学童保育とは、近隣小学校に就学または校内区に居住している児童を対象として、児童に安全で豊かな放課後および学校休業日の生活の場を提供し、保護者の就労を援助しながら、児童の健やかな成長を育むことを目的とした施設です。その学童保育が改修工事を行うに伴い、その先生からインサーの活動や作品の事を聞いた学童保育の保護者の方々が私達の活動に興味を持たれ、家具のデザインと制作を進めていくことになりつつあります。

  学童保育の家具デザインをする前に、施設の現状と、要望を知るために、現地調査を行いました。その際に子供たちと遊ぶ機会があり、現状を把握すると同時に子供たちと関係を持てるようになり、完成した時の子供たちの笑顔を見るのが楽しみになりました。

  インサーの活動を始めたことによって、色々な人との繋がりが育まれ、笑顔を見る機会が増えました。誰のためのどんなインテリアが必要なのかを考え、作品が完成した時、そこには笑顔が生まれます。それは、人を幸せな気持ちにしている何よりの証拠ではないでしょうか。たくさんの笑顔と幸せに出会うために、私たちはもっともっとインテリアについて学び、実践していきたいと考えています。