日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!36号
学生シリーズ(富山)

グリーンウッドワーキングを通じて

石澤 茉実
(富山大学 造形建築科学コース3年生)


図1 丸太の分割


図2 組み立て


図3 完成したスツール


図4 「県民で使おう、とやまの木」イベントの様子


図5 伝統構法の建前

去る10月、私はアートNPOヒミング主催のグリーンウッドワーキングのワークショップに参加しました。グリーンウッドワーキングとは、今はほとんど行われていない欧州の伝統的な手法です。森に入り、木を伐採し、その場で加工して木製品を作り上げる手法です。簡単な小屋を建てて一時的な住居兼仕事場とし、そこで木製品を作っていました。商品だけでなく、小屋での生活品、それら木製品を作る為の旋盤等も作ったそうです。今では電力で木工機械を動かしますが、バッテリーなど無かった当時は、樹木の弾性を動力として使ったそうです。

ワークショップは富山県氷見市の森で開催されました。今回は三脚のスツールを作りました。まず木を切り倒します。こればかりは本職の先生にお願いして、参加者は木の傍らで見守っていました。次にこの丸太にクサビを打ち込み斧で放射状に6等分か8等分にします。この割った部材をナタで削り、椅子の脚として使います。座枠と貫は適当な木の枝を調達し、両端を削って脚に差し込むようにします。座面は雪吊りなどに使う荒縄を巻きました。

また、富山市のグランドプラザで開かれた、「県民で使おう、とやまの木」というイベントにスタッフとして参加しました。このイベントは、来場者の方に富山県の森林活用に対して行われている活動を知ってもらおうというイベントです。イベントでは上記のスツールを作るグリーンウッドワーキングのワークショップ、伝統構法の建前のパフォーマンス、富山大学芸術文化学部生の県産材の杉を使った椅子の展示、県産材の積み木広場等々を楽しむことができました。また、実際に山から切り出した大きな杉の木を枝葉をつけたまま、まるまる展示しました。予想以上の来場者で、大成功でした。

これらのイベントを通して、森の中はとても気持ちが良くて、変わらないきれいなものとして、ずっと残して生きたいと強く思いました。今まで設計はユーザーの満足性の為だけに考えてきましたが、こういった自然や大きな意味での環境を考えることも大切だと気付かされました。
また、富山の森のことについて林業に従事している方からお話を聞く機会があり、その話を聞いて思ったことは、地場材が使われにくいということ、林業は今とても苦しい状態にあるということです。安い輸入材に押されて衰退してしまった国産材の消費ルートの復活は膨大な時間がかかるでしょうし、難しいと思います。それでも、この話を聞いたことで、森林と共生していくことを設計の立場から考えたいという私の想いの再認識、そしてより強くそう想うようになったと思います。