日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!37号
学生シリーズ(石川) テーマ:「女性と建築」

優しい色合いで描く作品への思い

山越 あゆみ
(金沢工業大学大学院工学研究科建築学専攻2年 森俊偉研究室)


図1 木造の家


図2 書斎とキッチン


図3 同窓会館


図4 建築スタジオ館

 出産。それは女性にしかできないこと。体内において一度に2つの命を宿し、生命の息吹を直に感じられる十月十日。人間だけに留まらず、同様に、植物や動物へも愛情を注ぎ、建築にも命を宿す。そう、建築はわが子そのもの。

  妊婦の顔は美しい。これから出逢うわが子へのあふれんばかりの愛に満ちた優しい顔と、これからわが子を産み育てるという覚悟を決めたたくましい顔が共存している。これ以上美しい顔・姿はないとさえ思える程である。

  感情。私は大変自然環境に敏感である。富山の田舎で育ち、母親に様々な花の名前、物事の美しさを教えてもらったからであろうか。雪解けの頃合いになれば、風の便りで春に気づき、今の季節はやはり稲穂の香りが香ばしい。夕暮れ時、絵の具をこぼしたように燃える空を横目に、身体中で四季を感じて帰宅する。

  当然のことながら、私はまだ出産を経験していないが、潜在的能力、母性本能とでも言おうか、女性には特別なものが宿っていると思う。そして、これらの行為が私のプレゼンテーションには活かされているように思う。文芸春秋のプレスの方には、「生活の基本、生命の開花する場への豊かな発想があると思う。」と評価を頂いたことがある。私はプレゼンテーションを行う際、優しい色合いに気を遣う。まるでひとつの絵画をみるような、見た瞬間に人々を惹き付け、幸福感を与え、気持ちを穏やかにするような作品にしたいと思っている。

  また、香りさえも感じられるようなものがいい。木々の香り、本の香り、油絵の香り、キッチンからの夕食の香りが漂ってくるような表現を感じ取ってもらえるようなプレゼンテーションを心掛けている。

  Fig1は住宅平面である。淡く優しく着色することで、自らの幼少時代を回想するような印象、または未だ見ぬ家へのあこがれを創造させるような印象を与えるであろう。Fig2は住宅の一部分を立面的に描いたものである。生活感が漂ってきそうな予感を与え、見る人の想像力をかき立てる。Fig3は同窓会館のパースである。私はいつもこのようなテーストで着色をしている。Fig4は建築の学生の学び舎である建築スタジオ館の鳥瞰パースである。大胆さと繊細さの両面を兼ね備えているところが女性らしさだと考える。妊婦の表情のように..