日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!37号
学生シリーズ(新潟) テーマ:「女性と建築」

空間をつくること

錦 舞子
(新潟大学大学院自然科学研究科環境科学専攻1年 黒野研究室)


図1 まち歩き


図2 里山歩き


図3 敷地写真


図4 話し合いの様子


図5 最終発表時の模型写真

 『女性と建築』を考えるにあたって、今年行った活動を踏まえて考えていきたいと思います。

  修士1年の授業「建築計画特論」(2単位)で三条ポケットパーク事業というものが毎年あり、今年で4年目を迎えました。これは三条市と新潟大学自然科学研究科が協働するまちづくり活動です。三条市の中心市街地を東西方向に横断するJR弥彦線の高架下には、11か所の小さな空き地があり、そのうち8か所に三条の8つの里山の緑を毎年1つずつ移植します。高架下の緑道に気持ちのよい空間、三条の里山の自然を感じられる空間を、地域住民、専門家、行政、私たち学生が協働してつくります。住民と学生が4班に分かれ、それぞれが設計を行い、三条市民による投票が行われます。

  班では、実際に高架下の緑道を通って敷地を見たり、園芸組合の方たちと一緒に里山を歩いて里山を感じながらどのような植物があるのか確かめました。実際に体を動かしたり、話し合いを繰り返しながら自分たちの中でどのようなポケットパークがあったらよいかイメージを膨らませていきます。私の班は住民に1人、学生で私1人と、班員8、9人ほどのうち女性が2人でした。他の班でも男性の方が圧倒的に多く、休日の昼に集まりがあるにも関わらず思いのほか女性の方が少なく、全体でもポケットパーク事業参加者のうち女性は、1割に満たないほどでした。

  しかし、班活動を通して感じたことは、植物に関する知識やこの場所をこうしたい、この植物を植えたい、こうすると楽しい・気持ちよい、といった考えや設計に関する希望を持っているということは男女で変わりません。皆、大人という立場からのみでなく、誰もが経験したことのある子供の目線に立ってポケットパークがどのようであれば楽しいか、安心して過ごせるか、ということを大事にして考えていきました。

  ここでは修士になって行った設計活動であるポケットパーク事業を例として述べましたが、人口の半分は女性、すなわち単純に考えれば空間を利用する半分は女性になります。また、世代も様々で、ポケットパークならば高齢者、学生や子供、主婦の利用が多いと思われます。このことからも空間の在り方、デザインを考えるのが女性であることは自然なことであり、理想的な形としては今回のポケットパーク事業のように老若男女皆がどのような空間が過ごしやすいか利用者の一人として考えていくことであると思います。

  今回の事業を通して、誰にとってもよい建築とは、ある特定の世代・性別の人たちが考えてできるものではない、つまり、男性・女性関係なく、さまざまな人の意見・希望があればある程それだけよい建築に近づくことができるのではないかと改めて感じました。テーマに『女性と建築』とありますが、「女性と建築」という括りに皆が違和感を感じるような社会となれば、より住みやすい環境になり、これからの建築を支えていくのではないかと思います。