日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!38号

北陸支部大会研究発表 若手優秀プレゼンテーション賞の受賞にあたって

発表題目:
「上下階の壁配置が伝統構法木造住宅の耐震性能に与える影響に
 関する研究」


河原 大 
(東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料学専攻大学院研究生)



図1 金沢の伝統的木造住宅群


図2 建物内部


図3 試験体概要


図4 上下階の壁がずれている図


  城下町金沢には、たくさんの伝統的木造建築物が現存しています。金沢が金沢らしくいるためにも、これらへの地震対策は文化的にも非常に重要な意味を持っています。これを読んで頂く皆様においても既知のこととは思いますが、そういった建物は昔は計算無く、大工職人の知識と知恵によって建てられていました。これを現在に耐震対策を施すためには、職人の勘を定量的に評価することが必要であり、最新の構造解析ソフトを以ても安易なことではありません。必要な耐震部位を少しずつ抜き出しての要素実験、あるいは実大建物の実験などを繰り返し、それぞれを評価する方法、ひいては全体を評価する方法を構築していくことが必要です。今回賞を頂いた研究発表では、上記の一端である、「上下階の壁がずれている場合、地震時に床はどのように変形するのか、またこの影響で壁の変形にはどのように影響するのか」ということを対象としています。

  以上のような研究に従事している若手研究者は他の分野に比べて少なく、一般的にも伝統的木造建築物がおかれている耐震構造的な状況をご存じの方はあまり多くないと思います。ですから、今回このような賞を頂き、広報誌に意見・感想を紹介して頂くことで、伝統的木造建築物の耐震構造についての広報活動(表現がおかしいかもしれませんが…)に貢献できたのではないかと思っています。

  そのことに関しては、私の研究する分野だけにとどまらず、あらゆる若手研究者にとっても重要だと感じています。きちんと研究内容を詳細な部分まで把握し、話しかけるように聞き手の立場で説明をする(私は、形式的にならないよう、敢えて原稿を作らないことにしました。)ことなど工夫をもって、このような賞をめぐって皆さんが(若手研究者が)切磋琢磨され、社会における研究が広く一般に展開していくような形ができればよいなと思っております。

  このたびはこのような有用な賞を頂き、誠にありがとうございます。この場をお借りして、審査いただいた方々に御礼申し上げます。