講演のプロローグは、自己紹介的に高円寺のChez moiやHouse in Kitasenjuなど川口氏の設計された4作品の紹介からスタートし、先ず演題「改修・・・」に入る前に建築家としての純然たる作風を印象付けられた。
次に学会ということで、昨今ブームとなったリフォーム、リノベーションに関する客観的な実態・動向を、壁紙新聞(関係専門誌)や矢野経済研究所などのリポート・分析評価をもとに統計的データを交えブームの背景等を分かりやすく解説された。もっと快適に(設備が古い)を理由とする割合が42%であること、500万円以上の改修予算が全体の3割をしめること、60歳以上の高齢者層のニーズが高いこと、さらにリフォームの潜在的需要は65%以上にのぼることなど、我国も本格的なストック社会へシフトしている様子を明示した。また、中古住宅購入が新築住宅購入を上回ったという事実は、ことの主要因として明快に受け止められた。
本題の改修事例については、川口氏の御出身地である新潟県三条市の「House in Kamiigusa(二世帯住宅へのリフォーム例)」、テレビ・ビフォーアフターで有名になった「House in Nakaitabashi(昭和の建売住宅11坪の敷地に9坪の家屋の改修例)」と「House in Kamakura(中古住宅を買った若夫婦世帯のリフォーム例)」、そして時間がせまった中アンコール的に新潟県三条市「鍛治町の家(大規模な伝統的民家をリノベーションしたデイサービス施設例)」の計4作品を、スライドと動画を用いながら熱のこもった口上で語っていただき、楽しくかつ興味深く拝聴することができた。また、「House in Kamiigusa」の竣工前の打合せ時に施主とお茶を飲んでいたとき、3.11の東日本大震災が起こったというエピソードもあった。