日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!39号

支部活動報告

「2011年度北陸建築文化賞の審査について」



川崎 寧史 (2011年度建築活動審査部会長、金沢工業大学環境・建築学部)


写真1 砺波出町子供歌舞伎曳山会館の審査風景


写真2 くらすわ CULASUWAのファサード


 まずは本年度の応募および審査経緯について概要を説明する。
 第22回北陸建築文化賞には業績0点、作品16点の合計16点の応募があった。地域の内訳は長野5作品、新潟5作品、福井3作品、富山2作品、石川1作品であり、応募数は地域により偏りがあった。
 2012年3月5日(月)11時より支部事務所で第3回建築活動審査部会を開催し審査を行った。部会員6名の内1名が学務の関係でやむなく欠席したが、事前に部会長を代理とする委任状が提出され、参加委員全員の了承を得て審査を開始した。
 まず、応募条件や審査基準を委員全員で確認した上で、審査方法を協議し審査を進めた。
 審査方法は、各委員が提出された全ての応募書類を審査したのち、投票と協議により上位4点を選定することとした。そのうち、書類審査では1作品が応募要件を満たしていないことが確認され、審査対象外となった。
 本年度の表彰総数は4作品としていることから、第1次投票では有効15作品に対して委員5名が持ち点6票で投票し、その結果に基づき審査を進めた。その結果として、満票(5票)2作品および次点(4票)1作品があり、協議の結果これらを上位3作品とした。残り1作品については協議および2次・3次投票を行い選定した。
 以上のように、慎重な審議の上で4作品を表彰候補として選定し、現地確認を実施した。候補4作品は以下の通りである。

・砺波出町子供歌舞伎曳山会館(富山・砺波市)
・テクニカ新社屋(福井・越前市)
・山古志闘牛場リニューアル(新潟・長岡市)
・くらすわ CLASUWA(長野・諏訪市)

 現地確認は2名1組を原則とし、応募書類の内容と相違がないか、さらに実体としての不備がないかなどを確認することが主な目的となった。現地確認は3月中旬〜下旬にかけて実施し、その結果を全委員の間でメール審議し、最終的な表彰の判断を行った。なお、“山古志闘牛場リニューアル”については積雪の関係で現地確認が困難となるが、電話による先方へのヒアリングを行い、応募書類通りの実体であることを確認した。

 以上の4作品は北陸という環境や地域に適応し、生活や文化を発展・継承する施設内容である。デザインも地形や風土、景観に十分配慮されたものであり、地場産の建材を積極的に利用する、あるいは地域の人々とともにデザインの一部を作り上げるなど、北陸建築文化への貢献にふさわしいレベルの高いものである。ここでは一つ一つの作品についての解説は避けるが、お時間があれば是非お立ち寄りいただきたい秀作である。今後、北陸建築文化賞マップやツアーのような企画があれば、北陸建築文化の発展や地域活性化により寄与するのではと感じる。

 北陸建築文化賞では他薦による応募も可能であり、建築種別や規模、設計組織の体制によらず北陸の建築文化を高めるような建築を発見し、これらを丁寧に表彰していこうという趣旨がある。しかし、近年は他薦による応募が極めて少ない現状があり、北陸建築文化賞の一つの重要な意義が失われつつある状況にある。これについては、今となっては十分に周知されていない現状があるので、本稿などにより今一度この表彰の意義をご確認いただければ幸いと感じている。