日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!40号

■研究・プロジェクト・技術紹介シリーズ(富山)

TAMAGO展を終えて―北信越地区の建築学生の交流・
スキル向上を図る場を創造したい―


根塚陽己
(富山大学大学院芸術文化学研究科芸術文化学専攻 貴志研究室)



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■北信越地区新人合同設計展を開催するにあたって

 現在、全国では多くの建築学生による卒業設計展、あるいは新人戦等が企画、運営されています。卒業設計以外の課題を評価してもらう場は、福岡のデザインレビューや、大阪の新人戦などがあります。それらの企画では全国規模のため、ディスカッションが上位案でしか行われないという現状があります。そして、東京では近い距離に他大学があり、展覧会や講演会等のイベントが多いため、大学を超えた連携が盛んです。一方北陸などの地方大学では大学同士の距離が遠いため、関係が希薄なのが現状です。

 私自身、学部生の頃はサークル活動をしていたこと、出不精だったこともあり、他大学と関わる機会がほとんどありませんでした。新潟で行われている卒業設計展「session!」に卒業設計を出展したとき、ローカルなイベントの良さを感じました。審査員をはじめとする他大学の方々との距離が近く、密なコミュニケーションをとることができました。そして今まで大学間の交流をして来なかったことに対して後悔したものです。

 こういった他大学との交流を早期に行えば、お互いが刺激し合い、学内講評だけでは得られない貴重な経験ができるはずです。さらに毎年、交流を続けることで親密になり、卒業設計展ではより白熱したディスカッションの場ができるのではないでしょうか。

 このイベントは北信越界隈の大学1、2、3年生を対象とした小規模の合同講評会です。地方学生のコミュニケーションを育むとともに、作品又は建築についてより深く細かいディスカッションを行うことで、設計スキルの向上を諮っています。また、大阪で行われる新人戦と違って、学年ごとに評価を分けることで受賞者はほぼ3年生という状況がなくなります。また、設計課題のない1年生も参加対象とすることで、他大学を意識し、ライバル関係が生まれ次年度以降にイベントの相乗効果が表れてくると確信しております。

 

■TAMAGO展」(写真1〜5)の概要について

 1次審査で各学年のパネルと模型を審査員の人が見て回り、質疑をします。その後各学年、5人の選抜者が2次審査にてプレゼンテーション。その後審査員の方々が賞を決定します。それに加え、審査員の方々のレクチャーと学生同士のディスカッションの場を設けることで出展者以外の学生にもイベントを楽しんでいただけるようにしました。

 今回、TAMAGO展を発案したのが3月、実際に動き出したのが4月、時間が少ない中での開催となりました。告知の時期も開催当日間近となってしまったのは反省点です。結果的に少人数になりましたが出展者の方々からは審査員の方々と密なコミュニケーションをとれてよかったという声もいただきました。また、今回出展された他大学の学生も後輩や同級生に来年の「TAMAGO展」への出展を勧めることについて確約していただけました。

 当日は過密なスケジュールでしたが、滞りなく進行でき無事成功を収めることができたと思います。時期的な関係で今回参加できなかった学生も聞いていますが、来年以降より広報活動の場を広げて、規模の拡大。それに伴い、常に新しい企画を行うというスタンスを持って取り組んでいきたいと思っています。その年にしかできない魅力を創出することができれば出展希望者も大勢集まるのではないでしょうか。数年後には北信越地方に「TAMAGO展」という素晴らしいイベントがあるということ全国の方に知っていただけるように努めていきたいです。