日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!41号

■学生シリーズ(新潟)

中越学生研究会わかば会での活動を通して

小嶋 かおり
(新潟工科大学工学部建築学科 長研究室)



写真1 サマーセミナーの
ヒアリングを終えて



写真2 二十村郷盆踊りの様子


写真3 川口きずな館での企画展


写真4 集落の方を招いての座談会


 中越学生研究会わかば会は、中越地震の被災地域で研究をする学生を中心に2008年に結成された。地域復興や災害に対する学術分野は広く学科も多岐にわたるため、その垣根を越えた仲間を形成する為につくられた。しかし、そういった学生の減少に伴い、現在は被災集落で他大学との交流を交えながら学生が主体となって活動をする、という方針で活動している。

 わかば会が2010年度より続けてきた活動として、中越地震の震央のある新潟県長岡市川口木沢集落でのセミナーの開催がある。夏と冬に県内外の学生を集め、2泊3日程度の合宿をするのである。体験活動やヒアリング等により、学生からの新しい目線で集落の再発見を行なう。セミナー後の学生のレポートを読むと、学生にとっても感動の多いものになっているようだ。

 2012年8月に開催されたサマーセミナーは開催集落を広げ、木沢集落を含む、かつて“二十村郷(にじゅうむらごう)”と呼ばれた地域のうちの四集落(新潟県長岡市山古志東竹沢地区、同市川口荒谷集落、同木沢集落、小千谷市塩谷集落)にわたって、4泊5日のスケジュールで行った。現在は市町村合併により市を分たれた四集落だが、二十村郷一帯は棚田や闘牛、錦鯉などの共通の環境や文化を持っている。今回は、震災後に復活した四集落合同の“二十村郷盆踊り”へ参加しつつ、現在の二十村郷を生きる人々の共通意識を、“盆踊り”という視点から掘り起こしてみようという趣旨のセミナーであった。

 二十村郷サマーセミナーは余裕を持ったスケジュールにより、各集落での体験活動(錦鯉の稚魚の選別等)やヒアリング(写真1)、集落の方々との交流会、そして二十村郷盆踊り(写真2)への参加や、模造紙へのまとめ、その発表と、大変充実したものとなった。後日提出された学生のレポートを読んでみても、セミナーを通して参加者それぞれの胸には何かしら刻まれたことが伺えた。

 セミナーを終え、今年はもう一歩先を目指した。まず、中越大震災のメモリアル拠点のひとつ、川口きずな館にて約一ヶ月間の企画展(写真3)を開催し、そこでセミナーの成果を発信することにした。これは、わかば会の活動や二十村郷について、外の人に知ってもらうという狙いもあったが、一番には、二十村郷の地域に住む皆さんに自分たちの住む地域について学生の視点を介して改めて見つめてもらいたいという思いがあった。嬉しい事に、会期中には顔なじみの集落の方が多く足を運んで下さった。更に会期の最終日には、セミナーでお世話になった各集落の方々をお招きし、わかば会主催の座談会(写真4)を開催した。そこでは、セミナーのヒアリングなどにより出てきた盆踊りにまつわる興味深い話題について、集落や市域を越えて共通の文化を持つ皆さんよりお話いただいた。

 私がわかば会での活動を始めたのは、大学2年の冬である。それまで、座学を通して自分の内側へと世界を広げていた私にとって、外側への世界の広がりを感じることの出来たわかば会の活動は、とても刺激的であった。一人で勉強するよりも圧倒的に色々な事を、沢山学べることを実感した。また、集落の皆さんとお話をしていると自分自身についての理解も深まり、人と話す事は自分と向き合う事なのだということを感じた。人との出会いの感動や、その楽しさを教えてくれたわかば会での活動、またそれを通して得たものが、今の私を形成する大切な一部となっている。最後に、学校の座学ももちろん大事であるが、学校の外にもこんなに学び場はあるのだということを多くの学生に知ってもらいたいと思う。