日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!42号

親と子の都市と建築講座 開催報告 〜新潟支所〜

新潟で20年目の「親と子の都市と建築講座」



五十嵐 由利子
(新潟青陵大学短期大学部 教授)



写真1 完成した新聞紙
エアドーム


写真2 エアドームの中であそぶ
子どもたち


写真3 丸太での説明


写真4 大きな作品に挑戦


写真5 スカイツリーが作れた!


写真6 模様を入れた
スカイツリー


 新潟支所企画の「親と子の都市と建築講座」は、1993年に始まり、2012年が20年目となりました(2007年までは「親と子の建築講座」)。本講座は、当初から有志による実行委員会を組織し、年3回の講座を企画・開催をしてきています。実行委員は、日本建築学会会員だけでなく県内の建築関係の人も含めて14人で構成しています。なお、1995年から新潟県建築士会との共同主催となりました。では、2012年に開催した3講座について、その概要を報告させていただきます。

 講座1は、地元の建築業の人たちで作っているボランティア団体「空福座」代表の小林義一郎氏を講師に、「新聞紙エアドームを作ろう!」というテーマで、新潟県立自然科学館で9月に開催しました。完成したのは大きな新聞紙エアドーム2個です(写真1)。高さが2メートルを超えましたので、中で子どもたちは風船を飛ばしたり、飛び上がったりして遊びました(写真2)。講座の時間の関係上、6面のうち5面は事前に空福座の方が作成し、参加者は1面を新聞紙とビニールをセロテープでつなぎ、窓になるビニール部分にカラーペンで絵を描きました。床面の新聞紙の筒の先に設置した小さな扇風機からの風で膨らんでいることに興味を持ち、ドームの中に入った子どもたちの中には、その筒の中に頭を入れ、ドームが縮むことをみんなに確認させてくれたという、嬉しいハプニングもありました。

 講座2は、10月に長岡造形大学で「アジロを作ろう!」というテーマで、木材研究家の巽登志夫氏と彫刻家の柳川貴司氏を講師に開催しました。丸太の見本から切り方によって木目の出方が違うことなどを学び(写真3)、様々な樹種の薄い板の色・香・木目・硬さなどを体感してから、市松模様やアジロ編みに挑戦しました。違う種類の板を用いて色の違いによる模様を工夫したり、中には大作を作り上げた子どももいました(写真4)。木造住宅に住んでいても、実際に様々な種類の木に触れる機会が少ない現状ですから、子どもだけでなく親にとってもよい経験になったようです。

 講座3は、「飛び出すカードでスカイツリーをつくろう!」というテーマで、実行委員会メンバーの木原隆明氏を講師に胎内市文化会館で11月に開催しました。まず、平面から立体になる折り紙建築の原理を学び、家やビッグスワン(新潟市内の競技場)を作り、カッターの使い方に慣れたところでスカイツリーに挑戦しました(写真5)。できた作品に鉄骨の模様を入れ、よりスカイツリーらしい作品に仕上げていました(写真6)。

 以上が、2012年の3講座の概要ですが、家族と一緒に来た幼児の参加が毎回のようにあります。幼児は講座の募集対象となっていないのですが、幼児の様子を見ながら、実行委員の支援で何らかの作品ができるように心がけています。

 参加者が講座での楽しい体験・実習を通して、都市や建築、それを支えている技術について関心を持ってくれることを期待し、21年目となる2013年も、3つの講座を企画しています。