まだまだ先かな、と思っていた北陸新幹線の開通。しかし、2015年春の開通まで2年を切り、ここにきて、停車駅の名称の決定や、JR西日本北陸新幹線開業準備室の開設など、開通に向けた準備が着々と進んできています。一方、金沢駅近郊では宿泊施設や商業施設の新築計画が浮上してきたり、地方都市としては珍しく駅前の地価が下げ止まったりするなど、開業景気の気配が強まってきました。
そのような中、もっとも気になる話題は北陸新幹線金沢駅の新駅舎ではないでしょうか(図1)。ゆるやかで優美な曲面屋根や、透明感の溢れるガラス壁は、金沢城址を頂く小立野台地を南北から包み込む、浅野川と犀川をイメージしているとのことです。詳細はベールに包まれていますが、現場を見たい、という好奇心に掻き立てられ、建設主体である鉄道・運輸機構の金沢鉄道建築建設所の足立次男所長、施工者である清水・大鉄・表JVの中山正夫所長に現場を案内して頂きました。本稿ではその現場ルポを報告したいと思います。
現場に入って圧巻なのがプラットホーム中央に位置する流線形の大屋根が織りなす大空間です(写真1)。腰屋根のように段違いになっている屋根のすき間と、「もてなしドーム」側(図1の中央に見える傘のような立体トラスドーム)のガラスカーテンウォールから差し込む大量の自然光により、プラットホームはことのほか明るく感じました。また、大屋根を支える大きな柱は枝分かれしたケヤキのようになっており、金沢駅の北西に延びる「50m道路」の街路樹に呼応した軽快さを演出しています。島式2面4線のプラットホームは既に完成していますが、これまた長大です(写真2)。総延長が312mもあり、12両編成が停車できる長さとのことです。
現場はいま、クローラークレーン2基を使ってホームの屋根の建て方を進めているところです。前述した中央の大屋根の構築を先行させ、ホームの両端に延びるよう建て逃げ方式で屋根を構築していました。現在はホームの南北端で4〜5スパンを残すのみであり、本稿が掲載される頃にはすべての鉄骨建て方が終了するのではないかと思われます。
写真3は現在の南側屋根の現況で、東側屋根のパラペットを揚重する様子です。実は資材の下部に見える架台は構台上をスライドする可動式の架台となっており、長いホームを往来し資機材を移動させることができます。金沢駅周辺はすでに交通動線のターミナルが稼働しており、大きな工事ゲートや工事用車両のスペースが充分に確保できないことによる現場の工夫とのことです。建て方も終盤に差し掛かり、この可動式架台のお役目が終了とのことで、中山所長も感慨深げでした。
写真4はホーム中央から東側を望んだ写真です。すでにカーテンウォールの施工も終了し、近日中に足場も撤去されるとのことです。写真では足場や防護シートが掛かっていますが、完成すると東側タクシー乗り場から新幹線の姿が見えるようになるそうです。これも金沢駅の売りだとか。早く新車両が入線したときの様子を見てみたいと思います。
このように現在は屋根・外壁の構築が進められていますが、徐々に仕上げ工事が進むものと思われます。仕上げには「金沢」らしさをアピールする多くの仕掛けがあるとのことですが、それらは出来てからのお楽しみだそうです。
久しぶりの現場見学でしたが、まず現場のスケールに驚かされました。また、鉄道・運輸機構様、清水・大鉄・表JV様からタイムリーな解説を伺いながら見学でき、とても勉強になりました。衷心より御礼申し上げます。
いま、北陸新幹線の列車名を公募しているそうです。現在は金沢−越後湯沢間を結ぶ「はくたか」という特急があります。上越新幹線の開業に伴い一時廃止となりましたが、かつては金沢−上野間を結んでいました。また、同様に金沢−上野間を結び、軽井沢を経由する「白山」という特急もありましたが、16年前に廃止となってしまいました。経由地は変われども上野(東京)−金沢間を結ぶ「はくたか」、「白山」が兄弟そろって復活することを望んでいるのは私だけでしょうか。「白山」に乗って横川で釜めしを買いにプラットホームを駆けた頃をふと思い出しました。
■工事概要
工事名称 |
北陸新幹線、金沢駅新築 |
旅客上家面積 |
約11,300 u |
駅本屋面積 |
約3,150 u |
構造・階数 |
鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造 3階建 |
仕上げ
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屋根:二重折板葺き |
外装:カーテンウォール |
工期 |
2012年8月〜2014年9月 |
建設主体 |
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
設計者
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独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 |
施工者 |
清水・大鉄・表 北陸新幹線、金沢駅新築特定建設工事共同企業体 |