日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!45号

建築文化週間2013 開催報告 〜石川支所〜

金沢リノベーションまちあるきツアー



宮下 智裕
(金沢工業大学環境・建築学部建築デザイン学科 准教授)




図1 カナザワケンチクサンポvol.2



写真1 香林坊周辺を歩く
ツアー参加者



写真2 アートと古いまちなみが重なり合う


写真3 高層ビルと町家の
コントラスト

 北陸支部石川支所では、平成25年10月26日(土)に建築文化週間の企画として、「金沢リノベーションまちあるきツアー」を実施しました。北陸新幹線開業を目前として金沢駅前から武蔵地区、さらには香林坊地区に至るエリアを、様々な建築やまちなみを見ながらゆっくりと歩き巡ることで、歴史文化都市としての金沢に魅力を再発見してもらおうというものです。金沢市中心部には各時代の様々な魅力的な建築が現存しています。その様な建築的に魅力ある資産を今後どのように活かしていくかは、建築のみならず、まちづくりの観点においても非常に重要なポイントとなるはずです。また近年、リノベーションにより新たな価値を創出し、魅力的な空間として再生している建築がたくさん現れてきました。そこで、金沢市と協同で製作している建築マップ「カナザワケンチクサンポ」(図1)を手に、見学を通して様々な建築やまちなみの見識を広げると共に、これらの資産の有効活用の可能性を探る機会を提供する事を目的として、この「金沢リノベーションまちあるきツアー」を行いました。「カナザワケンチクサンポ」は金沢市にある様々な近・現代の建築の素晴らしさを一般の方にも分かりやすく説明したものであり、建築単体だけでなくそれらをつなげたまちなみの楽しさも伝えようとするものです。企画および当日の案内は筆者が担当しました。

 まず、金沢駅前から武蔵ヶ辻に至るエリアでは、駅前もてなしドーム、本町にある大正時代に竣工した建物を使った旅館などを見ながら、大規模建築と小さな建築が折り重なるおもしろいまちなみを散策しました。安江町では、町家リノベーションが並ぶmachiya5、横安江商店街などを通りながら、昔ながらのまちなみに新しい風が吹き込まれている様を実感しました。その後、村野藤吾が設計を手掛けた北國銀行武蔵ヶ辻支店を見学し、2009年に元々あった市場空間の良さを残した再開発が行われた近江町市場で雰囲気を楽しみながら昼食をとりました。午後は、武蔵から香林坊地区に至るエリアを見学しました。始めに玉川図書館に立寄り、せせらぎ通り沿いの道を、用水を眺めながら歩きました。このエリアには多くのリノベーション建築が点在しています。様々な年代の方達がまちを楽しんでいる様子を見ていると、リノベーションされた建築達がこれまでのまちなみと相俟って金沢の中心市街地の新しい魅力となっている事をあらためて感じました。その後、金沢学生のまち市民交流館を見学しました。この施設は大正時代の町家をリノベーションした「学生の家」と、旧料亭大広間の部材を用いて新設した「交流ホール」からなる施設です。まちの中心部で学生が活発な活動を行う場所として、この施設が活き活きと使われている様子を見学しました。最後にしいのき迎賓館を見学し、約4時間にわたる「金沢リノベーションまちあるきツアー」を終了しました。

 参加者は28名(内学会員7名)で見学中は活発な意見交換なども行われ、金沢在住の参加者の方からも、「はじめて歩いた道が多くあり、新しい発見が数多くありました」、といった意見も聞かれ、大変有意義な建築ツアーになったと思います。