日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!45号

講演会 開催報告 〜富山支所〜

これからの子育てと住まい・住環境

    

富樫 豊
(NPO地域における知識の結い)




写真1 講師の小澤先生


図1-1 こどもが描く東北復興まちのプランa(こども環境学会復興プランコンペ集2011より)


図1-2 こどもが描く東北復興まちのプランb(こども環境学会復興プランコンペ集2011より 

図1-3 こどもが描く東北復興まちのプランc(こども環境学会復興プランコンペ集2011より

 2013年10月19日(土) 13:30-15:00、富山産業展示館会議室において、小澤紀美子先生(東京学芸大学名誉教授)を講師にお招きし、一般市民を対象に標記題目の講演会を行った。以下に結果を報告する。

 子ども関係や母親クラブの団体に呼びかけたこともあって、当日会場には熱心な主婦の方々がつめかけ一般の方を含めて25名が、小澤先生の講演に聞き入っていた。(写真1)

 先生は、最初に子どもの成育に欠かせない環境づくりの必要性を切々と述べられていた。特に、住まいや住環境に対する価値観を取り上げ、これが個人の属性や生活観と深くかかわっていると同時に、社会的・文化的蓄積の上に醸成されていることを指摘しながら、「人と自然の関係の多様性」をもっと生かしていきましょう、と切り出されていた。

 続いて、そのような観点から住まい環境や住環境について、皆さんに分かりやすく説明するために、住まいや住環境(まち)にかかわる絵本として「ちいさいおうち」 (バージニア・リー・バートン著:日本での翻訳本出版1954年)や「3びきのかわいいオオカ」(ミユージーン・トリビザス著1994)などを紹介されていた。 そして、それぞれの国の基底にある住文化のスピリッツや住まい・住環境の豊かさ、歴史・文化の織りなす多様性について話を進められた。

 後半では、東日本大震災復興について子どもの復興まちづくりのアイデアをいくつか紹介され(図1)、住まいや住環境のデザインにかかわった子どもたちの願いや意見を読み解くことの必要性を説くとともに、未来を創る行為のとしての住まい・住環境のデザインが未来への力を引き出す本質であると力説されていた。 また、街については、街は「屋根のない学校としてさまざまな人々が協働して」学び合う場であり、人を育む場である、と話されていた。

 質疑応答では、子どもの視点をどのように住まいづくりに活かせばよいのか、遊びを確保するのはどうすればいいのかなどといった質問が寄せられ、先生は懇切丁寧に応えていた。最後に司会からも、我々は子どもの視点にたち、子どもを元気にする住まいやまちづくりに役立てていきたいとまとめがあり、講演会を成功裏に終えることが出来た。

 会が終わった後も、子どもの遊べる場の問題や子どもの行動規制の問題等について、若い母親や父親と先生との間で談義に花を咲かせていた。