○開催日時:11月10日(日)午後1時半〜午後5時半
○開催場所:アオッサAOSSA6階研修室601-A
記念講演会の講師:加藤邦男(京都大学名誉教授)
シンポジウムのパネラー:白井秀和・国京克巳・池田俊彦・市川秀和
【記念講演会・シンポジウムの概要】
ウィトルウィウス建築書の邦訳などで名高い森田慶一(1895〜1983)が著した『西洋建築史概説』(彰国社1962年刊)は、戦後の福井大学での講義録をまとめたものとして知られる。福井大学の建築史・建築論研究は、この森田以後、増田友也(1914〜1981)を経て、1969年の渡部貞清(1918〜2011)着任から現在の白井秀和氏へと至って本格的に展開したとすれば、森田の著書が原点となったと言えよう。そこで今年は、森田の『西洋建築史概説』刊行50周年を迎えたことを記念して、講演会とシンポジウムが企画された。
まず記念講演会では、森田の研究を継承する加藤邦男氏が「森田先生と建築と」の表題のもとで講演した。学生時に接した森田の回想から話し始めた加藤氏は、徐々に森田と西洋建築の本題へと進み、特にフランス建築との関わりに着目して、森田の戦後代表作「京都大学基礎物理学研究所/湯川記念館」(1952)が、フランス近世のブロンデルやペロー、そして近代のペレーにみる秩序と節度を保った高貴な作品と通底し、さらに明晰な「古典精神」あるいは「建築の全一性」を希求する創造行為から制作されたことなどを説かれた。
次のシンポジウムでは、その前半で4名のパネラー(白井:西洋建築思潮、国京:日本建築・保存再生、池田:茶室・数寄屋、市川:森田慶一・渡部貞清)がそれぞれの専門の立場から各論発表を行った。そして後半では、パネラーに加藤氏も加わって幅広い視座から意見交換するとともに、会場から「建築史と建築論の関係」「建築論の意義と可能性」などの根本的質問が投げ掛けられ、内容的に深い討論が交わされた。「建築なるもの」を真に考えるため、歴史的(実証)かつ思想的(論証)な眼差しの大切さが示唆されたと言える。
なお当日は、北陸の晩秋らしい重い灰色の曇り空に小雨が降るなか、関西・京都からも積極的なご参加をいただき、また50年前に福井大学で森田の講義を聴いた方なども来て下さり、福井に於ける森田慶一を記念した講演会・シンポジウムは、とても充実したものとなりました。この企画の実現にあたり、ご協力いただいた多くの皆様に深謝いたします。