日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!47号

■いきいきまちづくりシリーズ(福井)

まちなかの再生をねらう
「道の駅西山公園」がオープンしました


内村 雄二
(福井工業大学建築生活環境学科 教授)



図1
西山公園と道の駅西山公園



写真1 西山公園と道の駅を
結ぶ道としてのブリッジ(人道橋)



写真2 ブリッジは支柱の無い
S造張弦梁橋



写真3
道の駅西山公園のファサード



写真4 屋内外から見通せる
法面のつつじ



写真5 トイレ入口の案内サイン


 道の駅といえば、観光地や主要国道沿いなどで多く見られ、あまり既成市街地に立地していませんが、メガネのまちで知られる福井県鯖江市に4月5日開業した「道の駅西山公園」は、中心市街地に隣接する西山公園の一部として建設されました。西山公園は日本の歴史公園百選のひとつで、現在県下で一番の入込客数約80万人/年を数えていますが、そのインパクトをもっと生かし、いわゆる中心市街地の活性化につなげるため、市は5年くらい前にあえて公園南端の国道417から100m程分岐する場所に道の駅の導入を決定したのです。福井県で11番目となる「道の駅西山公園」は、福井鉄道の西鯖江駅から250m、JR鯖江駅から1km強の旧市街地(城下)の縁に位置しており(図1参照)、まさにまちなか立地型の道の駅といえます。

 まちなか再生への寄与を図るため工夫されたのが、いかに公園に来る大勢の人々とまちとをスムースに直結する道を造るかということでした。西山公園は市街地部から地上15mを越える丘陵で、そこに行くのに84段の大階段を上らねばなりません。高齢者や障害のある方、乳母車の方などが、傍まで来て公園内に行くのを断念してしまうこともしばしばです。この改善のためにエレベーターと約30mのブリッジが道の駅に組み込まれました(写真1)。このブリッジは、つつじの咲く法面30mの間を無柱とするため鉄骨造張弦梁橋(写真2)で、人道橋としては多分全国で初めてだと思います。ちなみに、この構造設計は、スカイツリーの構造を担当された元日建設計の慶伊先生が実施しています。次に、まちなか回遊を楽しむための施設構成の工夫です。先ず一級の鯖江ブランド(メガネや漆器、織物など)を展示し、まちなかのショーウインドーとしての役割をも担う道の駅として計画されています。外観は、メガネをモチーフにメタルとガラスを基調とし、背後の花木・緑の障害にならないようにあえてモノトーンの色調としながら透明感のある建築デザインとなっています(写真3、4)。また、サインや案内・看板は極力少なくし、必要なものだけ建築にビルトインしています(写真5)。もちろん、内外の歩行部から駐車場、園地・緑地にかけてユニバーサルデザインが施されています。

 最後に、ここに「道の駅西山公園」をご紹介したのは、実は著者が大学と鯖江市・鯖江商工会議所の地域連携協定が御縁で、平成23年に市民や地元代表からなる道の駅検討委員会とその成果としての市長答申のお世話をしたのを契機に、全体の基本設計および竣工までの監修を担当させていただいたからです。一年で一番賑やかな5月のつつじ祭りは終わりましたが、公園にはレッサーパンダ飼育全国NO1の動物園もありますし、秋には紅葉祭りもありますので、何かの機会に是非足を運んでいただければ幸いです。