日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!47号

■学生シリーズ(石川)

高橋町から始まる防災まちづくり
  〜SoRAがつなげる官・学・民〜


広川 祐美
(金沢工業大学環境・建築学部建築学科)
青山 尚未
(金沢工業大学環境・建築学部建築学科)



図1 SoRAシンボルマーク
(ののいちまもる君)



写真2 勉強会の様子


写真3
防災すごろくによる防災教育



写真4 まち歩きの様子


写真3 防災マップ作り




 災害が発生した時に大切なことは自助・共助・公助といわれている。これらの中で災害直後に必要となる自助・共助が特に重要である。しかし、現在の大学周辺の状況を観察すると、共助の活躍が期待できる学生は周辺住民との交流がなく、実際に災害が発生した時に共助ができるような環境・雰囲気は整っていない。そこで学生と市民と行政が一体となり自助・共助を促進することができるような団体を作ろうと考えた。それがSoRAである。SoRAには学生(Student)、住民(Resident)、行政(Administration)を輪(○)で結ぶという意味が込められている(図1:シンボルマーク)。SoRAの目的は市民と学生の交流を深めつつ、防災の知識を増やし、防災・減災に対しての意識を高めることである。 

 現在は金沢工業大学の隣町である石川県野々市市高橋町の住民と野々市市役所の方々と共に活動している。主な活動内容は、防災勉強会、防災教育、防災まち歩きなどである。防災勉強会については1ヶ月に1回程度開催しており、過去に生じた災害や防災に関する文献を手掛かりとして学生が話題提供をしたり、自分達が災害にあったことを想定した高橋町の問題点の洗い出しや解決策を話し合ったりしている(写真1)。なお、高橋町が隣町であることから問題点や解決策は具体的であり、臨場感のある検討を重ねることができた。これらの活動を通じて住民・学生・行政がお互いに防災意識を高め合うことができたと考えている。

 防災教育については、2013年10月に小学生を対象に「防災すごろく」を実施した(写真2)。「防災すごろく」とは、すごろくをしながら防災に関するクイズを解き、児童が楽しみながら防災を学習することができる教育方法であり、SoRAの学生が考案したものである。小学生たちは皆、楽しみながら防災クイズの解答に夢中になっており、小学生の防災に対する関心が高まったと考えている。

 防災まち歩きについては、住民と市役所の方と共に歩きながら高橋町の危険個所を調査して、高橋町の巨大な防災マップを作製した(写真3,4)。このマップには、危険個所をその改善主体である個人と行政に分類して色分けしてある。そして、危険個所を改善できるかどうかの可能性を評価することができた。このように実際にまち歩きをしてみて、普段気付かなかった道路のひび割れや危険な塀などを多々発見することができた。想像していたよりも危険個所が多くあり皆が驚いている様子であった。

 今後は野々市市全体に調査範囲を広げ、耐震性の調査・延焼シミュレーションなどを行い、被害想定マップ作りに取り組む予定である。また、防災勉強会や防災教育を高橋町だけでなくSoRAの活動に理解・協力を頂ける町内会を増やし、野々市市全体にSoRAの活動を広げていきたいと考えている。