日本建築学会北陸支部広報誌 Ah!48号

■北陸支部活動報告 −2014年度北陸支部大会(富山)特集−

建築家と学生たちのシンポジオン
in 北陸支部大会(富山)の報告


大氏 正嗣
(富山大学芸術文化学部 教授)




写真1 竹原義二氏


写真2 富山大学教授 貴志雅樹


写真3


写真4 シンポジオン風景




 建築家の竹原義二氏と、富山大学教授貴志雅樹をパネリストとして、「社会における建築の役割」というテーマで学生たちを交えて議論を行った。最初に、建築家の竹原氏がスライドを交えて大阪で行われた長屋の再生や地域社会における保育園など、これまで関わられてきた作品について紹介していただき、それぞれの建築が持つ意味、そこに込めた願いや考えについて説明された。
 特に、都会の中心地に敢えて土の地面とそれに連なる長屋を持ち込む意味や、福祉関連施設を設計する上での考え方など、実作を紹介しながら行われた熱のこもったご説明は、非常に興味深くまた説得力のある内容であった。
 その後、学生から自分たちが取り組んでいる課題や疑問に感じていること等を竹原氏と貴志教授に質問し、様々な側面から意見や考えをお話しいただいた。竹原氏と貴志教授は古くからの交友関係を持っていたということもあり、学生たちからの質問に対してそれぞれに異なる2つの視点を提示する形で学生たちに答える形式をとりシンポジオンは進められた。
 学生たちの質問は、設計における素朴な疑問から「テーマパークは建築足り得るか」といった観念的なもの、あるいは思考実験的な内容、はたまたは衰退しつつある地域における建築の役割・設計に携わる建築家の役割を問うものなど、非常に幅広くストレートなものであった。
 これに対し両氏は自らの経験を事例として、ある時は明確な言葉で返し、また正反対の可能性を敢えて提示するなど、学生たちに建築における考え方には制限がないということを感じさせたのではないだろうか。 来場していた学生は、他の学生たちの質問や両氏の発言に興味深く聞き入りメモを取っていた。シンポジオンの参加者は、教員を含めて、約40名であった。
 得てして、こうしたシンポジオンは講師側からの一方的な流れになってしまうことが多いが、単純に学ぶという姿勢だけではなく、問いかけ、考えて生み出すという設計に至るスタイルを垣間見ることができる貴重な経験になったのではないかと思う。