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Vol.50 - 2015/04/01
《from 新潟支所》
まちかど研究室−商店街に大学生の活動拠点 

長 聡子/新潟工科大学工学部建築学科 准教授

□「まちかど研究室」とは
柏崎駅前商店街の空き店舗を活用した「まちかど研究室(以下、まち研)」は、新潟工科大学、新潟産業大学と柏崎市の連携事業として平成24年7月に設立され、これまで約3年間活動を続けてきました。まち研には両大学の有志の学生が集い、柏崎市中心部の賑わいづくりを目指し、地域の方々と交流・連携してまちづくり活動を行う拠点になっています。
そもそも何故このような活動が始まったのか。柏崎には二つの大学があるものの2校とも柏崎駅から郊外に5kmほど離れたところに立地しているため、商店街のある中心部では大学生の姿があまり見られません。せっかく多くの若者が柏崎で生活しているにもかかわらず、まちとのつながりはほとんどありませんでした。そこで、まちなかに大学生の集える拠点を設け、大学の魅力を発信したり、大学生が地域とつながる機会を創出するため、まち研が発足しました。(図1)



図1 まちかど研究室の位置と空き店舗活用の様子

□内装は自前で施工
まち研の活動拠点である空き店舗は長年使われていなかったため、活動開始当初の室内はボロボロの状態でした。しかし、実施する活動に合わせて、新潟工科大学建築学科の学生たちがその都度改修プランを考え、手を加えてきました。特に活動2年目には、まち研を駄菓子屋として運営することとしたため、開店前の約2か月間、学生たちは授業の合間を縫ってまち研に通い詰め、床板張りや休憩のための小上がり、陳列棚などを製作し、懐かしく立ち寄りやすい雰囲気を演出した空間づくりを行いました。地元の祭り「えんま市」に合わせた駄菓子屋の開店は市内外で話題となり、開催3日間で約1,500人の来店がありました。(写真1、2、3)


写真1 学生たちによる内装工事の様子


写真2 学生たちの定例会の様子


写真3 「えんま市」での駄菓子屋営業の様子

□地域に根付く、地域から学ぶ
駄菓子屋を始めた2年目からは市内でのまち研の認知度が高まり、様々な地域団体や地域活動から声を掛けていただく機会が増えました。学生たちも1年目の活動では、「自分たちでできることは何だろう」というまち研の中だけで収束する活動を企画してきましたが、2年目からは「地域の人を巻き込む活動へと展開させよう」という考え方に変化していきました。
近隣の小学校へ出前授業に行き、6年生の児童たちを対象に「柏崎のまちづくり」をテーマとしたワークショップを開催したり、地元商店街の店主の方々と相談して商店街の七夕行事をキャンドルナイトとして再生させたり、年間を通じて様々な関係者と連携しながら柏崎のまちづくり活動に取り組んでいます。
ただし、これらの活動は順風満帆だったわけではありません。学生たちがキャンパスを飛び出して活動する中では、両大学の学生間で意思疎通がうまくいかなかったり、地域の人との交流や交渉が計画通りに進められなかったりなど多くの壁にぶつかることもありました。しかしそのような地道なプロセスの中から学ぶことも多くあります。4年目の活動でも新たな地域とのつながりを広げ、大学や学生が地域に根付き、地域から学ぶ環境を築いていきたいです。(写真4、5)


写真4 小学校での出前授業(ワークショップ)の様子


写真5 地元商店街のアーケード下での七夕イベントの様子



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