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Vol.50 - 2015/04/01
《from 福井支所》
ひとのつながりがつくるまちの活性化 

坂田守史/NPO法人きちづくり福井

□多様な「人」が集まる場「きちづくり福井会社」
福井市のまちなかを主体に地域活性化をしようと、2012年6月にきちづくり福井会社は設立されました。発端はまちづくり福井株式会社が主催するまちづくりの人材育成セミナー「まちの担い手育成プロジェクト」で考えられた企画で、企画で終わるのではなく、実際に組織をつくろうと設立されました。福井市中心部の活性化を主体に活動する組織にも関わらず、メンバーは中心部の人よりも中心部以外の人たちが集まり、20代の学生から70代までの幅広い世代で、福祉関係・建築建設関係・公民館主事・デザイナー・事務職・自治体職員など多様な業態が集まり活動を始めました。特長としては、中心部のまちと直接的な利害関係がなく、純粋に「まちで何かをしたい」という気持ちで集まり、活動資金は「志金」として年会費1万円を集めて始動しました。当初約40人のメンバーからきちづくりのFacebookグループでは175人が現在登録されています。そして、2014年1月にNPO法人きちづくり福井を立ち上げ、現在に至っています。

□個人のつながりでプロジェクトは動く
活動の基本は、月1回の定例会とキチバルという交流会を開催し、会議と交流会を行っています。定例会も交流会もメンバー以外でも参加可能で、まちづくりに興味がある人もそうでない人も集まってきます。定例会では活動の報告と少しの議論、基本的に交流会で飲みながら食べながら、いろんな人たちが交流しあって、おもしろいね!それやろう!という感じで活動の企画が決まってきます。何をしなければいけないというきまりがあるわけでもないゆるやかな組織なので、「やりたい」という人や「やろう」といった人が基本にそこから支えてくれる人や必要な人をメンバーの内外から巻き込んでプロジェクトが動いていきます。この「個人同士のつながりから始まるプロジェクト」と「組織としてやらなければいけないことがない」ことがきちづくり福井の最も特長とすることです。(写真1)


写真1 きちづくり福井の定例会

□きちづくり福井の活動
きちづくりの活動は、事務所の「エキマエベース」を構える新栄商店街で4月〜12月の毎月第1日曜日に「裏路地フェスティバル」という新栄商店街のアーケードや空き店舗で音楽・ダンス・食・出展などのイベント開催。子どもたちとまちの関係を結ぶ「ベンチプロジェクト」ではベンチに子どもたちがペイントし、できたベンチを中心部に設置。また、福井市からの委託事業も受けており、福井市まちづくりセンター「ふく+」の企画運営、まち歩きの企画運営、中心部プロモーション冊子制作などを行っています。いずれもきちづくりのメンバーとメンバーが声をかけて集まった人たちで運営されています。(写真2、3、4)


写真2 福井市まちづくりセンター「ふく+」


写真3 ベンチプロジェクト


写真4 新栄裏路地フェスティバル

□まちを活性化させるのは何か?
そもそも「まちづくり」の目的は何でしょうか?公的な理由、ビジネス的な理由、福祉的な理由、まちづくりと一言でいっても様々な理由があります。まちづくりは抽象的な概念であり、不明瞭で曖昧で正解のないものです。「まちを活性化させたい」「まちづくりをしなければいけない」それらの発端は「個人の思いの塊」ではないでしょうか。
と、言えるようになってきたのも時代の変化だと思います。個人の情報発信が社会に影響するようになった今だからこそ言えるのかもしれません。
私たちは常に社会的問題の中に生き、それによってまちも変化しています。今の「社会」は、どのように捉えるべきでしょうか。今様々な場面で垣間みるのは、自身の考える「あるべき社会をつくる」ことへ変わってきたように思います。ミニマムで個人のつながりによってつくられる「あるべき社会」の集合体が構成されるようになってきました。今までの都市は「成長・発展・拡大・高密度化・利便性」がベースであったように思います。このベースは経済成長と人口増加に支えられ、日本が先進国と言われるまで発展してきました。しかし、今の社会は経済の低成長と人口減少に入っています。成長期を終え、成熟期から衰退期への移行に入り、今までのような都市構造や社会関係そのものが変化しています。これからは「限界設定・質的縮小・関係性の高密度化」というような、縮小をベースにしながらも質の向上と人と人の関係性の密度を高めることで新しい社会づくりが可能になると思います。



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