1998年度北陸建築文化賞受賞(作品)02

 長野市オリンピック記念アリーナ

 小野威、尾崎勝、播繁

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 この施設は1998年2月の第18回冬季オリンピックスピードスケート会場である。
同時に、大会後は市民開放多目的施設として、大規模から小規模にわたる、文化、スポーツ、産業イベントに対応しうるフレキシビリティが求められた。
国際イベント会場であり、かつコミュニティ施設であること。効率的な製氷空間としての空間量・熱負荷低減と熱的閉鎖、一方で省エネルギーの市民利用施設としての空間的開放。これらを両立させること、同時に400mスピードスケートリンク独特の長軸の方向性の強い空間にオリジナルな空間形態を与えて、地域に調和する景観をつくり出すこと、従来の大空間にないあたたかみといごごちよさをもつ空間とすること、更に地域の人々の生活実感になじんで親しまれ利用されやすい施設にすることが、この施設のテーマであった。
分節した木造吊屋根=天井という従来のドーム形状にない建築空間を、長手方向へのリニアな空間伸縮可変システムに統合化し、大空間施設において本来求められるべき本格的な空間量可変、イベント規模可変を実現しようとするのがこの施設の最大の狙いである。対面する直線状固定スタンドは、アメリカンフットボールなど大型スポーツや大規模イベントに対応し、一方前後進する一対の円弧状可動スタンドは、アリーナを小さく囲い込む「可動壁」の役割をもち、バレーボールやコンサートなどの小規模イベントに対応する。これは長野市のイベント規模に対応し、地域の生活実感に即して、市民利用の自由度を拡大しようとするものである。このような機能は、この大空間の都市的スケールからみて、地域文化を継承し創出してゆく「拠り所」としての、必要条件と考えるものである。
幸い、オリンピック、パラリンピックとも成功裏におわり、それ以降、各種見本市、ロックコンサート、地域運動会、大相撲地方巡業等、多種多様に活発に利用され今日に至っているのは、地方都市の公共建築のありかたとしてその期待にいささかなりとも答えたものと自負している。